飢え、拷問、空爆─リビア移民収容施設の悲惨な現状
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【7月5日 AFP】リビアの首都トリポリ近郊にある移民収容施設が空爆を受け、40人以上が死亡した事件は、アフリカ出身の移民・難民の社会的立場の弱さを浮き彫りにした。リビア国内の施設では、急性栄養失調、強制労働、拷問など、悲惨な環境下で移民や難民たちが苦しんでいると、民間援助団体(NGO)は非難の声を強めている。
2日夜、トリポリ近郊タジュラ(Tajoura)の移民施設が空爆された事件では、国際移住機関(IOM)の発表によると少なくとも44人が死亡、130人が負傷した。4日にAFPの取材に応じたIOM現地担当者の話では、空爆を受けた施設には当初600人もの移民・難民が入れられていたが、4日現在も「まだ300人が収容されたままだ」という。
主にアフリカ出身の移民らが収容されていたこの施設の環境について、国連(UN)は「ぞっとする」ものだったと表現している。
こうした移民の窮状は、移民らが欧州各国の海岸を目指してボートで渡航するのを阻止するため欧州連合(EU)とリビア沿岸警備隊とが結んだ合意によって生み出されたものだと、NGOは非難している。
今年1月以降、海上で渡航を阻止されリビアに送り返された移民らは、国連によると既に2300人を超えた。送還後はリビア各地の施設に収容される。タジュラの移民施設もその一つだ。
移民らを取り巻く状況は、リビアの元国軍将校で軍事組織を率いるハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)氏が4月、リビア統一政府(国民合意政府、GNA)からトリポリを奪還しようと攻勢に出たことで、さらに悪化した。攻勢開始以降、700人以上が死亡する中で起きた今回の移民施設空爆は、ハフタル氏の軍事組織が実行したとされる。
■絶望する移民たち
「欧州各国には、リビアの移民らの現状に関して、一定のレベルの無知がある」と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のバンサン・コシェテル(Vincent Cochetel)特使はAFPに語った。
移民らの間に広がる絶望感を象徴する出来事が、5月に起きている。今にも壊れそうな小舟に乗った男性が沿岸警備隊に発見された際、拘束されるよりはと海に飛び込んだのだ。男性はその後通りかかった船に救出されたが、この一部始終を独NGO「シーウオッチ(Sea-Watch)」が撮影していた。
また、今年2月には、人身売買組織が秘密裏に運営する移民拘束施設の内部の惨状を撮影した映像を、英テレビ局チャンネル4(Channel 4)が放映した。民兵らが移民・難民の家族から身代金を巻き上げるため、移民らに残虐行為を加えていることを示す内容だ。映像には、床に転がった男性がバーナーで足を焼かれて苦痛に叫ぶ様子や、血まみれのTシャツを着た男性が足を縛られ、天井から逆さづりにされて頭に拳銃を突き付けられる様子などが捉えられていた。
IOMの統計によると、現在リビア国内の正規の移民収容施設には少なくとも5200人が収容されている。政情の不安定なスーダン、ソマリア、エリトリアなどの出身者が多い。人身売買組織が運営する違法施設に、いったい何人が拘束されているのかは不明だ。
「リビアの移民収容施設内では、遺体が山積みになっている」と、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」のリビア派遣ミッション責任者は指摘。「こうした施設に拘束されているのは主に難民で、病気や飢えで亡くなる人が後を絶たない。彼らは、民兵によるあらゆる暴力や性的暴行、恣意(しい)的な扱いの犠牲者だ」と訴えた。(c)AFP/Lucie PEYTERMANN