ボツワナ、ゾウの狩猟禁止措置を解除 環境保護団体も賛否分かれる
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【5月25日 AFP】ボツワナ政府は今週、野生動物の狩猟の全面禁止措置を解除した。この決定に対し、自然保護活動家たちの多くは怒りの声を上げ、「恐ろしい」動きだと非難している。
同国政府はゾウの生息数が増加し、農家の生計手段に影響が出ているとしており、5年にわたった狩猟禁止措置を終わらせる22日の決定がゾウの生息数を脅かすことにはならず、批判するには当たらないと主張。
政府は声明で、閣内委員会が「人間とゾウの激しい確執」と「生計の手段に与える影響」などに感化されたとし、「害を与える動物が増加し始めたとみられ、多数の家畜が殺されるなど、大きな被害を招いている」と指摘。「狩猟の禁止措置は解除されるべきとするのが、協議に加わった人たちの総意だ」と述べた。
全面禁止令は、熱心な環境活動家でもあった当時のイアン・カーマ(Ian Khama)大統領が、野生動物の減少傾向を反転させようと2014年に導入した。
だが与党ボツワナ民主党(BDP)の議員らは、野生動物の数が増え、一部地域では制御不可能になってるとし、政策の変更を訴えるロビー活動を展開してきた。
アフリカ最多のゾウの生息数を誇る同国には、13万5000頭以上の野生のゾウが生息。ゾウたちは、フェンスのない公園内や開けた大地を自由に歩き回っており、今回の議論は特にはゾウの狩猟に焦点が当たっている。
英ロンドンを拠点とする動物保護団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(Humane Society International)」は、「恐ろしい決定だ。保護に取り組む人々の間に衝撃が走ることになる」と非難し、「狩猟の再開は、道徳的に疑問の余地があり、ゾウの保護に向けた国際的な取り組み全てを無視するだけでなく、非常に価値のあるボツワナの観光産業にも損害を与える可能性が高い」と訴えた。
だがボツワナのキツォ・モカイラ(Kitso Mokaila)環境・天然資源保護・観光相は、「われわれは、向こう見ずなわけではなく、今後も向こう見ずであることはない。われわれの環境保護への責任は変わっていない」と述べた。
■「政治的な動き」との批判も
カーマ前大統領の後任として昨年就任したモクウィツィ・マシシ(Mokgweetsi Masisi)大統領は、就任の5か月後にこの政策についてのパブリックレビューを開始。そうした中、両者の間には、政治的な摩擦が高まっていることを示唆する報道も相次いでいた。
米国に拠点を置く国際動物福祉基金(IFAW)のジェーソン・ベル(Jason Bell)氏は、「これは政治的な動きであり、ボツワナでの保護活動において最善の利益を図るものではない」と指摘。「ゾウたちは膨大な犠牲を払って、政治的ないけにえとして利用されている」「狩猟が人間とゾウの確執を緩和することはない」と批判した。
その一方、ボツワナの自然保護団体は、トロフィーハンティング(合法的に趣味で行う野生動物の狩猟)では多額のお金が支払われることから地域社会の助けになると主張。「チョベ・エンクレイブ・コンサベーション・トラスト(Chobe Enclave Conservation Trust)」の代表はAFPに対し、「狩猟が再開されることをとても喜んでいる」と述べた。
また「人々は、野生動物と共生の矢面に立たされ、耐え忍んできた。兄弟たちを亡くし、農作物や畜牛も失った」と説明し、「密猟ではなく、コントロール可能な可能なトロフィーハンティングによる収入で生計が成り立っている」と話した。
さらに世界自然保護基金(WWF)は、「科学的な証拠によって、トロフィーハンティングが幅広い複合的な戦略の一環として、効果的な保護手段になり得ることが示されている」としている。
一部の専門家によると、豪華なサファリツアーが有名なボツワナでは、ゾウの生息数が16万頭を超えた可能性もあり、過去30年間で3倍以上に増加したという。この数字はアフリカ全体におけるゾウの生息数の3分の1を占めるという。(c)AFP