発泡スチロールのいかだで海へ 家族養うため働く少年 フィリピン
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【6月1日 AFP】リマーク・カベシラノ(Reymark Cavesirano)さん(13)は毎週末、夜明け前に家を出て、マニラ湾での非常に危険な仕事に向かう。フィリピンでは何百万人もが極貧状態にあり、日々生き残るために闘っている。カベシラノさんもその一人。湾に出掛けるのは家族を養う生活費を稼ぐためだ。
カベシラノさんは廃棄木材と発泡スチロールのシートでできたいかだに乗り込み、素手をオール代わりにして、職場である漁船まで1時間ほどこぐ。カベシラノさんは、自分の倍以上の年齢の男性たちに交じって漁網に絡まった魚を外す仕事をしている。
フィリピンでは全人口1億600万人の約5人に1人が極度の貧困状態にあり、1日の収入は2ドル(約220円)にも満たない。子どもを含め多くの人が、路上で物を売ったり、肉体労働をしたりして日々の糧を稼いでいる。
カベシラノさんは仕事が終わるといかだをこいで陸地に戻り、賃金代わりにもらった魚を売って、家族のための食料や薬を手に入れる。カベシラノさんはAFPに対し、「いかだをこいでいるので背中がいつも痛いけど、やめるわけにはいかない。食べるためには働かなくては」と話す。
カベシラノさんは平日、小学校に通っている。祖父母と一緒の住まいは竹とプラスチック製のシートを合わせて造られたもので、マニラ湾岸の不法占拠者が集まる地域にある。母親とは別々に暮らしている。
祖母のレメディオス・サントス(Remedios Santos)さん(55)は、海の上は危険なので孫が働くことには反対だが、言っても聞かないと話す。「危ないからと言ったら、『他人は絶対に助けてくれない。僕が助けるからね』って」。サントスさんは今でも、ごみの山から再利用できる廃品を拾って日銭を稼いでいる。
カベシラノさんの実入りが良ければ、家族がその日に食べる量としては十分な米1キロと、300~400ペソ(約630~840円)の現金を持ち帰れることもある。このお金は、サントスさんの結核の薬代か、翌週の学校の費用の足しにする。
10歳のときに兄に泳ぎ方を教えてもらい、漁船で働き始めたカベシラノさんは、学校を卒業し、家族に楽をさせたいと思っている。
「大事にしてくれる祖父母にお返しがしたい。コンクリート製の3階建ての家を買ってあげたい」とカベシラノさんは語った。(c)AFP