【3月23日 AFP】国際陸上競技連盟(IAAF)が女子選手のテストステロン値を制限する動きに出ていることを受け、国連人権理事会(UN Human Rights Council)は同連盟を糾弾した上で、問題の渦中に置かれている陸上女子中距離のキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)への支援を全会一致で可決した。

 国連人権理事会は、IAAFが「国際人権の規約と基準」に違反している可能性があると指摘し、スポーツ界に対する異例の決議案を採択した。南アフリカを中心とする今回の決議では、スポーツの統括団体が「強制や強要、あるいは女性選手、女子選手に無用かつ屈辱的で有害な医療手順に踏み切ることを迫るような慣例」をつくることを阻止するように各理事国に呼び掛けられ、21日の理事会において47人のメンバー全員によって採択された。

 スイス・ジュネーブの国連(UN)事務局に派遣された南アフリカの国連大使は、AFPの取材に対して、決議が満場一致で承認されたことに「心から感激しました」といい、「本質的に国連メンバー全員が、私たちに賛同してくれたことになります」と述べ、「キャスターは女性です。疑わしい科学的根拠によって、彼女が女性でないと言われる筋合いはありません」と訴えた。

 セメンヤは代理人を通して発表したコメント文で、人権理事会の「支援」に感謝の意を伝えた。

 一方のIAAFは、決議案の発起人が問題となっている規定を理解していなかったと主張しており、コメント文で「国連人権理事会に提出された申し立ては、包括的で不正確な言及が含まれているため、どこから手をつけるべきかの判断が難しい」と主張。女子のスポーツを守るためのルールなしでは、「選手たちが成功への道を見いだせなくなるため、次世代の女子アスリートを失う危険がある」と反論した。(c)AFP/Ben Simon