東北虎・東北ヒョウの「里帰り」促す 中国東北地域で生態保護強化
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【3月3日 Xinhua News】3月20日、5月16日、10月17日……梁卓(Liang Zhuo)さん(41)が勤務する東北虎(アムールトラ)・東北ヒョウ国家公園管理局綏陽(Suiyang)局では、昨年1年間に野生のアムールトラの痕跡を35回確認した。梁さんは「観測開始以来、出現率の最も高い1年になりました」と述べ、これは野生のアムールトラの活動が活発になり、生態系が順調に回復している証拠だと分析する。
世界の絶滅危惧種であるアムールトラは、主にロシア極東地域と中国東北地域に生息する。100年以上前は東北地域の多くの山々に生息していたが、のちに環境破壊などの影響により個体数は激減し、20世紀末にはすでに少数が生息するだけになっていた。
中国が生態系と自然保護を重視するにつれて、野生のアムールトラは森林の生態系の象徴種として高い注目を集めるようになった。「生態ピラミッドの頂点にいるアムールトラが安心して暮らせてようやく、生態システムが本当の意味で回復したと言えるのです」と国家林業・草原局ネコ科動物研究センターの姜広順(Jiang Guangshun)常務副主任は語る。
専門家によると、健全な生態系は「10分の1の法則」に従う生態ピラミッドだという。つまり、緑色植物2万キログラムはイノシシなどの草食動物2000キログラムに変わり、草食動物2000キログラムはアムールトラなどの肉食動物200キログラムへ変わるというイメージだ。
中国政府は生態環境を改善し、アムールトラ・東北ヒョウの東北地域への「里帰り」を実現するため、吉林、黒竜江省の両省に計146万ヘクタールの土地を拠出し、東北虎・東北ヒョウ国家公園テスト区とした。ロシア、朝鮮と隣接するこの区域の面積は米国のイエローストーン国立公園の1.6倍で、将来的に野生のアムールトラ・東北ヒョウの楽園になることが見込まれる。
近年、禁伐や禁猟などの具体的な対策を講じたことで、中国東北地域の山林では熊やイノシシ、ノロジカ、鹿などの動物が徐々に増え、東北虎・東北ヒョウの生存環境が整いつつある。綏陽局の観測データを分析した結果、現地の2018年のイノシシの生息密度は1平方キロメートルあたり1.91頭で、2011年と比較し1.34頭増加したことがわかった。
東北虎・東北ヒョウ国家公園の観測装置が、今年1月8日午後10時59分に1頭のメスのアムールトラが2頭の子を連れて散歩する姿を捉えた。昨年は家族で定住する野生のアムールトラ3頭を観測し、アムールトラの子ども7頭を撮影できたのは同公園管理局の琿春(Huichun)局だけだったが、姜副主任は「これは現地の野生アムールトラ個体群が生息する繁殖地の保護が、うまくいっている証しだと言えます」と喜んだ。
同公園の観測結果によると、中国国内には少なくとも野生のアムールトラが27頭、東北ヒョウが42頭いるとみられており、これらが繁殖期を迎え、中ロ国境から中国国内へ移動し分散する傾向にある。
中国国内の野生のアムールトラ・東北ヒョウの個体群は、依然として人間の活動による環境破壊や個体群の孤立化などの問題に直面しており、その生存と運命は、長期的に見れば東北地域の生態環境の回復にかかっている。
梁さんは「私どもは、より多くの野生のアムールトラや東北ヒョウが暮らせる山林をよみがえらせたいのです」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News