【2月27日 AFP】世界の15歳未満の小児がん患者のうち、約45%が診断されず治療を受けていないとする画期的な調査結果を、国際研究チームが27日、英医学誌「ランセット・オンコロジー(Lancet Oncology)」に発表した。小児がんの診療を受けている割合に関しても、先進国と発展途上国の間で著しい格差があることも浮き彫りになった。

 論文によると、世界全体で毎年約40万人が新たに小児がんにかかっているが、国の医療制度の下で登録されているのは半数弱だった。

 世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)の科学者、エバ・ステリアロバフーシェ(Eva Steliarova-Foucher)氏は、未診療の小児がん患者について「ほぼ確実に亡くなるが、死亡診断書にはがんという病名が記載されない」と指摘した。

 調査した国の60%にはがん登録制度がなく、制度がある国でも国民のごく一部しかカバーしていなかった。

 今回の研究では、病気が社会に及ぼす損害を指標化した「疾病負荷」を新たな方法で算出。WHOの統計「世界保健オブザバトリー(Global Health Observatory)」と、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)が開発した健康と世帯に関する調査から得たデータも取り入れた。

 研究では、プライマリーケア(初期診療)の利用と専門治療への紹介の全般的な水準を考慮した。

 論文の主執筆者で、米ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)のザカリー・ワード(Zachary Ward)氏は「私たちのモデルによれば、小児がん患者はほぼ2人に1人の割合で一度も診断を受けておらず、治療されずに死亡している可能性があることが示唆されている」と指摘。「過少診断はかねて問題と認識されてきたが、このモデルではこれまで欠けていた具体的な推計を示した」と述べている。

 調査では、ほかの多くの病気と同じように小児がんの診療に関しても先進国と発展途上国の間で格差があることも判明した。

 200か国のデータを調べた今回の研究によれば、アフリカ、南・中央アジア、太平洋の島しょ部では、診療を受けていない小児がん患者が半数超に上っていた。これに対して、米国や欧州、カナダではその割合はわずか3%だった。

 調査した年で最新の2015年には、小児がんの新規患者数は大半の地域で横ばいもしくは減っていた。しかし、その92%が低中所得国に集中していた。

 サハラ以南のアフリカ諸国を除けば、同年に罹患者が最も多かった小児がんは急性リンパ性白血病だった。

 論文では、2015~30年に世界全体で670万人が新たに小児がんを発病すると予測している。(c)AFP