【2月27日 AFP】ロシアでシャチやシロイルカ(ベルーガ)が大量に捕獲され、中国の水族館へ不正輸出されている問題が昨年発覚したが、ロシア政府内の意見対立が原因でシャチらの解放が阻まれている。

 昨年夏、生け捕りにされたシャチ11頭とシロイルカ87頭が、ロシア極東のナホトカ(Nakhodka)にある警備付きの施設で小さないけすに閉じ込められている写真が公開され、国際的な非難が巻き起こった。

 ロシアはシャチとシロイルカを「教育」目的で捕獲できる唯一の国だが、法の抜け穴をついて、中国で増えている海洋水族館の需要を満たすために輸出されている。ロシア政府は22日、「苦しんでいる」動物たちの運命を解決すべきだとしてこの問題に介入した。

 しかし政府内では、イルカの解放を要求する天然資源環境省と、捕獲を合法的な産業の一部として擁護する連邦漁業庁の間で意見が二分している。

 シャチには、魚を餌とする一般的なシャチと、アザラシを餌とする珍しい群れがいる。捕獲されているのはより希少な後者だという。天然資源環境省はアザラシを捕食するシャチを、国際自然保護連合(IUCN)が指定する「絶滅危惧IB類(EN)」に分類しようとしている。同省によれば、アザラシを捕食するシャチでロシア領海内にいる成体は、わずか200頭だという。

 一方、連邦漁業庁を管轄する農業省は、シャチ全体を水産資源に対する脅威とみなし、シャチは危機に瀕していないと主張している。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は22日に大統領令で、3月1日までに「イルカの運命を決める」よう閣僚らに指示した。

 昨年捕獲されたシャチとシロイルカを海に戻す活動に携わる「サハリン環境ウオッチ(Sakhalin Environmental Watch)」のドミトリー・リシツィン(Dmitry Lisitsyn)代表は、「1シーズンのうちにここまで大量に捕獲され、1か所に閉じ込められている例はない」と話す。ナホトカ市内では16日、環境団体や支持者たちがシャチとシロイルカの解放を求め抗議活動をした。

 ロシアの捜査当局は、密漁と動物虐待の容疑で捜査を開始した。また同国の環境監視当局は、捕獲されたイルカを輸出する許可証の発行は拒否したと述べている。しかし捜査自体も、裁判に発展する場合も何か月もの時間を要する可能性がある。(c)AFP/Maria ANTONOVA