【2月20日 AFP】ヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因となって発症する子宮頸(けい)がんは、検診の受診率とHPVワクチンの接種率を短期間に上げることができれば、今世紀末までに世界で事実上撲滅できる可能性があるとする論文が、英医学誌「ランセット・オンコロジー(Lancet Oncology)」に掲載された。

 19日付で同誌に掲載された論文によると、検診の受診率とワクチン接種率が現状のままならば、2020~69年の50年間に世界で4440万人の女性が子宮頸がんになり、その3分の2は国民生活の豊かさを示す国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」(HDI)が中程度以下の国で発生すると見込まれるという。

 しかし、2020年までに12~15歳の女子のHPVワクチン接種率が80%以上に上がり、さらに少なくとも70%の女性が生涯に2度子宮頸がん検診を受けるようになるとすれば、今後50年間で1300万人程度が子宮頸がんになるのを予防できるという。その場合、子宮頸がんの罹患(りかん)率は、HDIが非常に高い国では2059年までに、HDIが中程度の国で2079年までに、女性10万人当たり4人未満に下がると予測している。研究チームによるとこの罹患率は、「子宮頸がんは公衆衛生上の重大問題ではなくなった」とみなし得る水準だという。

 論文の主執筆者、オーストラリアのニューサウスウェールズ州がん評議会(Cancer Council New South Wales)のカレン・カンフィル(Karen Canfell)教授は、子宮頸がんは非常に重大な疾患だが、その撲滅は手の届くところにあることを今回の研究結果は示唆している、と話す。

 HPVはありふれたウイルスで、主に性行為を通じて感染する。100種類以上あり、うち少なくとも14種類ががんを引き起こす。通常の免疫力があれば子宮頸がんになるまで15~20年かかるが、エイズウイルス(HIV)感染などで免疫力が弱っていると短期間で発症する。HPVワクチンは臨床試験で、その安全性と子宮頸がんの70%を引き起こしているとされる2種のHPV(16型と18型)に対する有効性が示されている。

 世界保健機関(WHO)が今月発表したところによると、2018年に世界で新たに57万人が子宮頸がんになったと推定されている。女性のがんでは乳がん、結腸がん、肺がんに続いて4番目に多く、主に低所得国で毎年30万人以上の女性が命を落としている。(c)AFP