「唯一の欠点は溶けること」 氷の楽器のオーケストラ
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【2月15日 AFP】米国出身のティム・リンハート(Tim Linhart)さん(59)が氷から楽器を制作し始めたとき、楽器は音楽を奏でるどころか、パーンと大きな音を立てて割れていた。しかし、それからずいぶんと進歩を遂げた。
リンハートさんは現在、平均気温が氷点下12度になるイタリア・アルプス(Alps)山脈につくった特大イグルーの中で、地元の音楽家が演奏する「氷のオーケストラ」を主宰している。
リンハートさんはAFPの取材に対し、「生まれ育ったニューメキシコ(New Mexico)州にあるスキーリゾートで雪と氷の彫刻を作っていた。そこで、バイオリンの彫刻を作ったら面白いと思ったんだ」と語った。
氷で作った楽器の中から音が聞こえてきて、「これは良い。少し弦を締めれば音が大きくなる」と考えた。しかし弦をきつく張ると、楽器は粉々になったという。
高度2600メートルに位置するパッソ・パラディーソ(Passo Paradiso)では、いまだに楽器が自然に壊れることがあるが、頻度は減っている。
リンハートさんはこの場所で、バイオリンやビオラ、ティンパニ、木琴、コントラバス、マンドリン、チェロ、さらには自身が発明した、巨大な打楽器の管を集めた「ロランドフォン」を制作した。
マンドリン1台の制作に費やす日数は5~6日。さらに大きな楽器は何か月もかかるという。
リンハートさんは「氷は大きくすることも削ることもできる素晴らしい素材。その上、無料だ」「唯一の欠点は溶けること」と話した。
自分のチェロをリンハートさんと共同制作したニコラ・セガッタ(Nicola Segatta)さんは、氷の楽器は伝統的な木製楽器に比べて「より透明感のある」音がすると語る。「楽器は非常にもろい。制作中は、常に何千もの破片へと崩壊する危険と隣り合わせです」
しかし、氷の楽器が奏でる音楽の「力強さ」は、楽器の「もろさ」と対照的に観客の感情を大きく揺さぶるという。(c)AFP/Charles ONIANS