【2月5日 AFP】(更新、写真追加)フランス首都パリの高級住宅地にあるアパートで5日未明、火災が発生し、少なくとも10人が死亡、約30人が負傷した。警察は、精神に問題を抱える住民の女による放火の疑いがあるとみている。当局が明らかにした。

 火災は午前1時(日本時間同9時)ごろ、高級住宅地として知られるパリ16区内のエルランジェ(Erlanger)通りにある9階建てアパートの上層階で発生。少なくとも10人が死亡し、消防隊員8人を含む33人が負傷した。

 パリ検察のレミ・エーツ(Remy Heitz)検事によると、アパートの住民で「過去に精神的な問題があった」40歳の女が、現場近くで身柄を拘束された。警察筋はAFPに対し、女は「酒に酔っているように見え、拘束時には通りで車に火をつけようとしていた」と明かした。

 パリジャン(Le Parisien)紙は、同じアパートに住む男性(22)が匿名を条件に語った証言を掲載。これによると、男性の交際相手の女性が4日夜、女に対し音楽の音量を下げてほしいと頼んだところ、口論に発展し、カップルは警察に通報した。

 カップルは警察による対応中に外出したが、帰宅時に女と廊下で出くわし、「幸運を祈る」と告げられたという。男性は「すると煙の臭いがして、女が階全体に火を放ったのだと気づいた」「復讐(ふくしゅう)しようと、私の部屋の外に火をつけたに違いない」と語っている。司法筋の話では、女は聴取を受けた後、精神科施設に収容された。

 警察によると、アパートからは50人前後が救出された。現場には200人以上の消防隊員が出動し、鎮火には5時間以上を要した。警察は、今後現場から他の犠牲者の遺体が見つかる可能性もあるとしている。

 AFPの取材に応じた近隣住民のニコラさんは、「最初はけんかだと思った。女性がとても大きな声で叫ぶのが聞こえたから」「女性は叫び続けていて、自分たちが外に出てみると、すでに建物から火が上がっていた」と話した。

 現場では当初、車両が入れない中庭に面した部分で火災が起きていたことから、救出活動が難航していた。ニコラさんは「消防隊も到着したばかりだったが、驚いたことに隊員らは完全に無力だった。車両も高いはしごもあったのに、何もできなかった」と話した。(c)AFP/Joseph Schmid and Guillaume Decamme