【1月31日 AFP】メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(Andres Manuel Lopez Obrador)大統領は30日、軍を動員して麻薬組織を取り締まる「麻薬戦争」の終結を宣言し、麻薬王の逮捕はもはや政府の優先事項ではないと述べた。

 定例記者会見で、昨年12月の大統領就任から現在までに麻薬王を一人でも逮捕したかと問われたロペスオブラドール氏は、「戦争などない。公式に、もはや戦争はない。われわれは平和を望んでおり、平和を実現しようとしている」と答えた。

 ロペスオブラドール氏はさらに、麻薬王が一人も逮捕されていないのは「それがわれわれの主な目的ではないからだ。政府が主な目的としているのは、公衆の安全を保証することだ」と主張。「われわれが求めるのは治安であり、1日当たりの殺人件数の減少だ」と続けた。

 だが、大統領のこの発言には、疑問の声が上がっている。反既成勢力を掲げる左派のロペスオブラドール氏は、大統領選で公約した軍の引き揚げをまだ行っていないばかりか、国家警備隊の創設を提案しており、軍国化に向かう懸念が指摘されている。

 メキシコは2006年、有力な麻薬組織との戦いに軍を投入。名高い麻薬王らの逮捕が相次いだが、分裂した組織が互いに争ったり軍に戦闘をしかけたりと暴力の連鎖を招き、広く批判を浴びる戦略ともなっていた。

 軍の投入から13年間にメキシコ国内で記録された殺人事件の件数は20万件を超え、殺人発生率が世界最悪の殺人多発国と並ぶ州もある。昨年の殺人事件発生数は3万3341件で、過去最多だった。(c)AFP