【1月30日 AFP】ロシアの首都モスクワ郊外に散在する旧ソ連時代の映画館は何十年にもわたって、地域社会の中心としての役割を担ってきた。

「火星」や「ダイヤモンド」といった名前が付いた映画館の多くは、ソ連で映画ブームが起きた1960年~70年代に建てられた。ショッピングセンターに入居する映画館よりも手頃なチケットで鑑賞できるとして、ソ連崩壊後も人気を博していた。

 しかし、そのうち40軒近くが今、広範なモスクワ再開発計画の一環として、ガラス張りの現代的な複合施設に姿を変えている。

 不動産開発を手掛けるロシアのADGグループ(ADG Group)は2014年に政府から、旧ソ連時代に建設された映画館39軒を購入。「気軽に行けるショッピングセンター」に変身させる計画だ。3軒の映画館を除いて、すべてが完全に解体され、再建される。

 取り壊しを免れている映画館の一つが、1938年にモスクワ北東部に建設された「ロージナ(Rodina、ロシア語で母国の意)」。巨大な支柱と旧ソ連のモザイク画を有するスターリン時代の歴史的建造物だ。ADGグループは、この建物の屋上に当初あったテラスを復活させようとしている。

 だが、その他の映画館は、20世紀後半のソ連で流行した機能主義の建築様式「ブルータリズム」によるもので、ADGグループはそれらの「建築的価値はわずか」だと評している。

 同グループが新たな映画館のために雇ったのは、英ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(Victoria and Albert MuseumV&A)などの仕事で知られる英国人建築家アマンダ・レベット(Amanda Levete)氏だ。

 スケッチによると新たな映画館はどれも前面がガラス張りで、店舗やカフェのスペースが加わって以前よりも大型化する。郊外に離れて位置する映画館同士が「ネットワーク」であることが分かるよう、設計に共通性を持たせたという。