【1月24日 AFP】イングランド・プレミアリーグ、カーディフ・シティ(Cardiff City)に移籍したFWエミリアーノ・サラ(Emiliano Sala)選手(28)を乗せた小型飛行機が消息を絶った事故で、捜索にあたるレスキュー隊は23日、同選手を発見できる可能性はゼロに等しいと明かしその生存は絶望視されているが、この事件をめぐっては新たに金銭面でのデリケートな問題が浮上している。

 サラ選手は19日、フランス・リーグ1のナント(FC Nantes)から推定1700万ユーロ(約21億円)の移籍金でカーディフと3年半の契約にサイン。21日にサラ選手は、翌日の練習に参加するためにウェールズに向けて小型機に搭乗したが、同機は英ガーンジー島(Island of Guernsey)の北方約20キロの地点でレーダーから消えた。

 ナントとカーディフのファンが夜を徹してサラ選手の無事を願う中、両クラブが問題に直面していることが発覚した。誰が移籍金を支払い、どこが両クラブに対する多額の補償金を支払うかだ。

 仏パリに拠点を置く法律事務所の弁護士アレクサンドラ・コーエンジョナサン(Alexandra Cohen Jonathan)氏は、AFPに対し「国際サッカー連盟(FIFA)に登録された時点で移籍契約は有効となる」と話す。

「今回の場合では、たとえ選手の消息が不明となったとしても、原則としてカーディフはナントに1700万ユーロを支払わなければならない」

 ナントに近い情報筋によると、「契約は土曜日(19日)の午後5時に結ばれ、そして月曜日(21日)に承認」されており、契約は最終合意済みだったという。

 一般的にクラブが選手に対しかける保険には2種類がある。選手のけがに対する賠償責任保険と「キーマン」保険だ。

 この「キーマン」保険は、会社の中心的なメンバーを突然失ったときにビジネスを守ることを目的としているが、サッカーではクラブは重要な選手を失った場合に備えてこの保険を利用しており、その額は移籍市場における選手の価値を基準としている。

 コーエンジョナサン氏は「ナントは確実にこのタイプの契約にサインしているが、移籍がすでに成立してしまったときでもこれは適用されるのか?」と疑問を呈した。「カーディフはこの保険をすでにかけていたのか? それはすでに有効なのか?」

 また、カーディフのメフメト・ダルマン(Mehmet Dalman)会長は23日、クラブはサラ選手に渡航の手はずを整える提案をしたが、同選手は自ら手配することにしたという。

 航空機の事故では航空会社が補償の責任を負うことになるが、その支払い上限額は一般的に10万ユーロ(約1250万円)が上限だとコーエンジョナサン氏はいう。

 しかし、同氏は「航空会社に過失があることを証明すれば」この上限はなくなると話した。「その場合、保証される権利は十分かつ完全なものになる。損害額が1700万ユーロなのであれば、その全額を補償される権利を持つ」 (c)AFP