【1月20日 AFP】英王室のフィリップ殿下(Prince Philip、97)の運転する車が別の車と衝突して横転する事故があった翌18日、英国内では運転免許の年齢に上限を設ける必要性をめぐり、議論が高まっている。

 エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の夫のフィリップ殿下は、元パイロットで馬車競技の選手経験もある。高齢のため公務からは引退したが、運転をやめる気配はない。

 英国で70歳以上の運転者は、3年ごとに運転免許を更新しなければならないが、試験を受ける必要はない。運転免許庁(DVLA)の昨年11月の統計によると、英国に90歳以上の免許保有者は11万790人いる。このうち100歳以上は314人で、最高齢は107歳の4人だった。

 免許の返納が必要となるのは、医師から3か月、またはそれ以上の期間、運転を止められた場合や、運転に必要な健康基準を満たしていない場合。さらに、20メートル離れてもナンバープレートの数字を読むことができる視力が求められる。

■事故が多いのは「高齢者より初心者」

 17日に起きたフィリップ殿下の衝突事故を受け、高齢者の運転をめぐる議論が飛び交う中、英自動車協会(Automobile Association)のエドマンド・キング(Edmund King)代表は、高齢者よりも運転初心者の方が事故を起こしやすいと指摘する。

「年齢と安全性に基づいた運転規制を導入するのであれば、高齢者よりも若い運転者を念頭に置いた規制とすべきだ」とキング氏。理由は「高齢ドライバーは夜間の運転を避ける、慣れた道で運転するなど、自制して運転している」からだという。

「車の運転をあきらめるのは難しい決断だ。だが、法律で設けられた上限に従うより、かかりつけの医師や家族らのアドバイスに基づいて決断すべきだ」(キング氏)

 英国で唯一、運転免許がなくても自動車の運転が可能な人物がエリザベス女王だ。運転免許証の交付者が自分自身であるためだ。同様の理由で、女王はパスポートも保有していない。(c)AFP/ Robin MILLARD