【1月11日 AFP】子宮頸がんの前がん病変の検出率は、熟練した専門医の検診や従来のスクリーニング検査よりも、人工知能(AI)を用いた画像評価アルゴリズムの方がはるかに高いとする研究結果が10日、発表された。AIによって子宮頸がんが撲滅される未来が、すぐそこまで近づいているかもしれない。

 世界保健機関(WHO)によると子宮頸がんは女性に多いがん4位で、2018年には世界で推計57万人が新たに発症した。スクリーニング検査と、発症原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染予防ワクチンの技術は大幅に進んでいるものの、その恩恵にあずかれるのは今のところ裕福な先進国の女性のみだ。

「今や子宮頸がんは貧困と低リソースの病気だ」と、論文の最終著者(シニアオーサー)で米国立がん研究所(NCI)がん疫学・遺伝学部門(DCEG)の医師マーク・シフマン(Mark Schiffman)氏は指摘する。

 35年にわたり子宮頸がんの治療法を研究してきたシフマン医師は、研究チームと共に、コスタリカで1990年代から最長18年間にわたって9400人以上の女性を追跡調査。収集した子宮頸部の画像6万枚余りを元にアルゴリズムを構築した。画像の撮影には膣鏡と小型照明、カメラのみを用い、高度な画像処理は行わなかった。

「米国立がん研究所機関紙(NCIJ)」に掲載された論文によると、開発されたAI技術「自動画像評価(automated visual evaluation)」は、がん細胞の元となる前がん細胞を91%という高い精度で検出した。一方、専門医の検診による検出精度は69%、細胞診検査など従来型の検査では71%だった。

 また、子宮頸がん発症リスクが最も高い25~49歳女性に対象を限定すると、AIアルゴリズムの検出精度はさらに上がって97.7%に達した。「AIは、同じ画像を検査した人間と比べてはるかに優れた結果を出した。私よりずっと優秀なのは間違いない」とシフマン医師は述べている。

 研究チームでは、今後3~5年以内の実用化を目指し、より多くの患者を対象にした世界規模の臨床試験を行う予定だ。世界中どこでも簡単に利用できるようにするのが最終目標で、シフマン医師によると、その実現のため主要慈善団体から支援を受ける約束をちょうど取り付けたところだという。

 シフマン医師はまた、新AI技術を最も必要とする女性たちが利用できるようにコストを非常に低く抑えるため、あえて特許は申請していないと語った。(c)AFP/Kerry SHERIDAN