【1月8日 AFP】農作物の成長促進を目的とする遺伝子組み換えの研究に取り組んできた米イリノイ大学(University of Illinois)が、「遺伝子ハッキング」すなわち「ショートカット(近道)」によって植物のタバコの生産量を40%増やすことに成功し、そのことを実証する研究論文を3日の米科学誌サイエンス(Science)で発表した。

 農場経営者らは長年、生産性を向上するために肥料や農薬などを利用してきたが、これらの農業技術はもはや頭打ちで、生産性を従来より大幅に向上させる可能性は低いと考えられている。今回の研究は、タバコの生産量を増やすことではなく、人口増加に伴って増大する食糧需要を満たすためにコムギやダイズに技術を応用することを目標としており、米慈善財団ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)や英政府などが資金提供した国際プロジェクトの一環として進められている。

 イリノイ大のカール・ウーズ・ゲノム生物学研究所(Carl R. Woese Institute for Genomic Biology)の研究チームは、植物が日光を利用して二酸化炭素(CO2)と水をエネルギーに変換する光合成の作用効率を本質的に向上させる方法を発見したと主張している。

「ルビスコ」と呼ばれる酵素は、大気中のCO2を植物が有機化合物に変換する「炭素固定」として知られるプロセスで重要な役割を担っているが、一方で、大気中の酸素を「固定化」し、毒性化合物に変換するようにも作用する。植物はこの毒性化合物を除去するのに、本来なら成長に費やせるはずのエネルギーを多量に消費する。この競合的なプロセスは「光呼吸」として知られている。

 そこでイリノイ大の研究チームが考案したのは、光呼吸を迅速化すると考えられる一種の生物学的なショートカット(近道)をつくるために、タバコの細胞に藻類のDNA片を埋め込む方法だ。