【1月6日 AFP】キリスト教東方正教会で最も高い権威を持つコンスタンチノープル総主教庁(トルコ・イスタンブール)の総主教バルトロメオス1世(Bartholomew I)は5日、ウクライナ正教会の独立を認める文書に署名した。独立に反対していたロシア正教会と決別することになる。

 バルトロメオス1世は、トルコ・イスタンブールで行われた式典で「トモス」と呼ばれる文書に署名した。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領とビクトル・ユーシェンコ(Viktor Yushchenko)元大統領も同席し、式典を見守った。ポロシェンコ大統領は総主教に感謝し、「親愛なるウクライナの皆さん、これは歴史的な出来事だ! 今日は素晴らしい日だ!」と呼び掛けた。

 コンスタンチノープル総主教庁は昨年10月、ウクライナ正教会の独立承認に同意。その後12月にウクライナ正教会は、首都キエフで主教会議(シノド)を開き、国内正教会の宗派を統合しロシア正教会から独立した教会を新設すると決めた。これに抗議してロシア正教会はコンスタンチノープル総主教庁との関係を断絶。正教世界におけるモスクワの宗教上の権威に大きな打撃を与えた。

 ウクライナで親欧州派のデモが繰り広げられ、当時のビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領が失脚した2014年以降、ロシアとウクライナの関係は悪化している。ロシアはその後ウクライナ南部のクリミア(Crimea)を併合。また、これまでに1万人以上が死亡したウクライナ東部の衝突で親ロシア派分離独立勢力を支援している。

 ドイツ・ベルリンにある東欧・国際研究センター(Centre for East European and International Studies)の研究員、レギナ・エルスナー(Regina Elsner)氏はウクライナ正教会の独立承認はまだ「長い道のりの第一歩」にすぎないと指摘し、「ウクライナのどの司祭が新教会に参加するのか、他のどの正教会がウクライナ正教会を認めるかを見ていかなければならない」と述べた。(c)AFP