【12月29日 AFP】イスラエルを代表する作家のアモス・オズ(Amos Oz)氏(79)が28日、がんで死去した。熱心な平和論者としても知られ、回想録『ア・テイル・オブ・ラブ・アンド・ダークネス(原題、A Tale of Love and Darkness)』は世界的ベストセラーとなった。

 娘のファニア・オズサルツバーガー(Fania Oz-Salzberger)氏がツイッター(Twitter)でオズ氏の死を確認した。

 作家として広く評価されているオズ氏は、1967年の第3次中東戦争(Six-Day War)でのイスラエルによるパレスチナの土地の占領に対し最も早く、そして最も強く反対した一人としてもよく知られており、パレスチナ国家の創設を一貫して支持していた。

 オズ氏はアモス・クラウスナー(Amos Klausner)として1939年、エルサレムに生まれた。1人っ子で、両親はユダヤ人国家樹立のためにロシアとポーランドから移住した。

 パレスチナの英国委任統治の最後の数年、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と2つの民族が領土を争う戦争の脅威に悩まされながら過ごした厳しい幼少期は、後にオズ氏の文学活動の主なテーマとなった。

 12歳の時の母親の自殺も、悲痛な過去を回想した作品『ア・テイル・オブ・ラブ・アンド・ダークネス』のテーマとなった。同作品はミリオンセラーとなり、ハリウッドのオスカー女優ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)により映画化された。

 エルサレムでの暮らしとの決別を求めたオズ氏は15歳の時にキブツ(イスラエルの集団農業共同体)に移り住み、ヘブライ語で強さと勇敢さを表す「オズ(Oz)」に姓を変更。その後の25年間、キブツで断続的に暮らした同氏は、キブツの日常生活と家族の試練に焦点を当てた作家として頭角を現した。

 オズ氏は数々の作品で賞を受賞、ノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)の候補にも取り沙汰されたが、受賞はついに実現しなかった。(c)AFP/Mike Smith