【12月28日 AFP】ブラジルのタミレス・フェレイラダシウバ(Thamires Ferreira da Silva)さん(29)は、おなかに宿した6か月の胎児がジカ(Zika)ウイルスのために重度の脳損傷を受けていると医師から告げられた──。あまりのショックに、リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)でバスの前に身投げして死のうとしたが、運転手がすんでのところでブレーキを踏んだ。

「ただ終わらせたかった」とフェレイラダシウバさんは涙ながらに語った。

 フェレイラダシウバさんは今、夫のワラシさんや家族、医療専門家らに助けられながら息子ミゲウ君を育てている。

 ミゲウ君は、この蚊が媒介する病気に感染したと診断された、ブラジル最初の子どもだった。当時この病気はまだ知られていなかったが、間もなく世界的な健康問題の焦点となった。

 しかしあれから2年以上が経過した今、フェレイラダシウバさんは「世間からは完全に忘れられているように感じる」と話す。

 2歳4か月となったミゲウ君は、脳や頭部の成長に問題が生じる「小頭症」を患っており、脳のしわが平滑になる異常も部分的にみられる。斜視もあるが視力はあり、家族の声に反応もする。だが脳の障害により、歩いたり座ったり、頭を上げたりすることができない。

 両親は療法計画に従い、12時間ごとに6つの投薬を行い、医療機関への受診も定期的にしている。計画は厳密で費用も高額だ。「困難で費用もたくさんかかる。他の家族は子どもを隠して社会から見えないようにしているが、われわれは、社会の一部でいたい」とワラシさんはAFPの取材に話した。

 ミゲウ君の治療でかさむ費用を工面するために、ワラシさんは夜間にコンピューター技師として働いている。治療は異なる3つの病院で行われており、小児科医、腎臓医、理学療法士、精神運動専門家らを受診しているという。