ヒマラヤ山麓で造る中国製高級ワイン、モエ・ヘネシーの挑戦
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【1月2日 AFP】欧米で300ドル(約3万3000円)で売られているワインが、意外な場所で造られている。伝統の歌を口ずさみながら農民たちがブドウを摘んでいるのは、中国側のヒマラヤ山麓だ。
標高2200メートルを超える山々が連なる中国南西部の雲南省(Yunnan)、梅里雪山(Meili Snow Mountain)の麓にアオ・ユン(敖雲、Ao Yun)のブドウ畑はある。
中国のワイン消費量が急増する中、生産者としてのアオ・ユンの知名度は低い。だが、フランスの高級ワイン大手モエ・ヘネシー(Moet Hennessy)は中国で最高級の赤ワインを製造できることを示すために、中国語で「雲上を飛ぶ」という意味の名を持つこの辺境の地に賭けた。
モエ・ヘネシーは広大な中国で実に4年をかけて、ワイン生産に最適な場所を探していた。白羽の矢が立てられたアオ・ユンは、2013年にデビューした。
アオ・ユンのブドウ園の管理者、マクサンス・デュルー(Maxence Dulou)氏(43)は、中国で壮大な「テロワール」(ブドウの生育環境)を発見することを「夢見ていた」と話す。モエ・ヘネシーでは、地元の消費者ですら国産ワインよりフランスワインを信用する中国で、最高のワインを造ることができると証明したかったのだという。
アオ・ユンのワイン生産量は、年間2000ケースのみ。中国を含むアジア諸国と欧米諸国で販売されている。
■東洋と西洋の出会い
同省政府がワイン産業の振興に乗り出し、大麦からブドウへの栽培作物の切り替えを奨励してから10年後の2012年、モエ・ヘネシーは地元農家から30年間、ブドウ畑を賃借する契約を結んだ。ワイン大手の同社は地域4村に豊富な専門知識とリソースをもたらした。
ブドウ畑は1年を通して穏やかな気温を誇る、メコン川(Mekong River)、長江(Yangtze)、サルウィン川(Salween River)の中間地点に位置する。
28ヘクタールに及ぶ土地は、300区画以上に細かく区切られている。ブドウの収穫は全て手で行われるため、世界の他の大規模なブドウ園と比較すると4倍の時間がかかる。
自らの土地は貸し出し、家族と一緒にこのブドウ畑で働くチー・リウドゥイ(Ci Liwudui)さん(42)のような村民にとって、以前は主要穀物を育てていただけの農場が、高利益を生む農場へ変革を遂げたことは思いがけない幸運だったという。