【12月23日 AFP】美容院から飛び出し、近くに止まっていた自動車に全力で駆け込む2人の少女──。少女らが駆け込んだのは、強制結婚や性奴隷になることを強いられている女性被害者らを救出し、故郷に送り届ける活動をしている団体の車両だ。この時は、中国からベトナム人の少女2人が助け出された。

 中国では女性よりも男性の数が圧倒的に多く、花嫁や性産業従事者の売買に拍車をかけている。

 彼女たちを故郷へ帰す活動は危険を伴う。救出する側は、復讐(ふくしゅう)しようとする夫や売春あっせん業者、組織的な人身売買ネットワークにも注意を払う必要がある。

 ベトナムの首都ハノイを拠点とする非営利団体(NPO)「ブルードラゴン(Blue Dragon)」は2007年以降、人身売買の被害にあった女性たち約400人を救出してきた。

 中国には、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオスといった貧しいメコン諸国から、花嫁や売春婦として売られた女性たちが数万人存在している。彼女たちは、勧誘されたり、拉致されたりして国境を越えているが、中には厳重に管理された共産主義国家の深部に捕らわれている女性もいる。

■「助けてください」

 被害者たちは、微信(ウィーチャット、WeChat)やQQといった中国版SNSを使うか、もしも電話にアクセスすることができれば電話で、ブルードラゴンに接触してくる。

 送られてきたメッセージには、「私は中国に売られてきました。どうか助けてください」や「奇跡が起こることを祈っています」などと書かれていた。

 しかし、少女たちの大半──特に性産業従事者──は、外部との接触を禁じられている。組織にとって少女を失うことは、大きな金銭的損失を意味するためだ。

 救出には高いリスクが伴うため、計画を実行するまでに数か月を要することも多い。

 ある少女は、体調不良を訴えて医療機関を受診し、そこからブルードラゴンに電話をした。スタッフが救出に向かった先は、彼女が花嫁として売られていた中国の地方部だった。

 また売春施設に売られた別の少女は、客の携帯電話を使って団体に接触。用心棒の目を盗んで裏口から逃げた。