【12月21日 AFP】シリアに展開する米兵2000人を撤退させるとドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が19日に発表したことで、最悪の状態に陥っていた米トルコ関係は急速に改善した。

 トランプ大統領は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」を打倒したと宣言しシリアからの米軍撤退を発表した5日前に当たる今月14日、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領と会談しており、密約があったのではないかとの臆測が飛び交っている。

 エルドアン大統領は、トルコ国内で反政府活動を行っている非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」とつながりがあるとして、米軍と共にISと戦ってきたシリアのクルド人部隊を今すぐにでも攻撃すると警告してきた。

 トルコのメブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相は17日、トランプ大統領がシリアからの米軍撤退に再び言及したと発言していた。

 しかし、トランプ氏が19日に米軍撤退を電撃発表するまで、チャブシオール氏の発言を真剣に受け止める人はほとんどいなかった。米国務省の報道官もチャブシオール氏の発言について、シリアでの「任務(の目標)はまだ達成されていない」と断言していたからだ。

 いくつかの米メディアは、トランプ大統領がシリアからの米軍撤退を決断したのは、エルドアン大統領と会談した直後だと報じている。しかし、トランプ氏は予測不可能であることを誇りに思っている人物である上、かねてシリアへの軍事介入は費用がかかりすぎると述べ、米軍撤退を検討してきた。

 イスタンブールのシンクタンク、経済外交政策研究所(Center for Economics and Foreign Policy Studies)のシナン・ユルゲン(Sinan Ulgen)会長は、「実のところ、トランプ氏の決定はトルコとほとんど関係ない」「しかし、(撤退の)タイミングはエルドアン氏との電話会談によって早められた可能性がある」と指摘した。

 米国に犠牲者が出る恐れのある間にトルコが攻撃に踏み切る可能性はまずないとみられていた。明確に意識されているか否かはさておき、シリアからの米軍撤退はトルコによる攻勢への道を開く。

 米シンクタンク「アトランティック・カウンシル(Atlantic Council)」のファイサル・イタニ(Faysal Itani)上級研究員は、「これはトルコへの大きな後押しで、米トルコ関係の改善だと思う。また、トルコのロシアへの依存を弱めることにもなる」と分析した。(c)AFP/Francesco FONTEMAGGI avec Ezzedine SAID à Istanbul, with Ezzedine Said in Istanbul