【12月20日 AFP】メキシコで先駆的に開発された「再水和技術」がなかったら、ホルヘ(Jorge)さんの腐敗した遺体は墓標のない墓に埋葬されていただろう。だが、この技術を使うことにより、遺体のタトゥーからホルヘさんの身元を特定でき、遺族が望んでいた葬儀を執り行うことも可能になった。

 米国境に近い、かつては世界で最も暴力的な都市とみなされていたメキシコ北部シウダフアレス(Ciudad Juarez)では、麻薬組織同士の終わりのない抗争の影響で、身元不明の遺体が発見されるのは珍しいことではない。過去10年では組織間抗争がらみで約1万4000人が殺害されている。

 そのような社会環境のなかシウダフアレスの法医学者らは、ミイラ化した遺体の組織に再び水分を供給する再水和法の研究で世界的な名声を集めている。

 そのうちの一人であるアレハンドロ・エルナンデス・カルデナス・ロドリゲス(Alejandro Hernandez-Cardenas Rodriguez)氏は、「ミイラ化したり腐敗したりした遺体を遺族に引き渡すと、遺族は遺体に目を向けることができないか、できたとしても本人だとは分からない。遺伝子検査の結果99.99%本人に間違いないと伝えても、遺族は決まって確信が持てないままになる」と話す。同氏は、自身の技術を指導するために海外で会議や研修会を開催している、世界的に有名な専門家だ。

「再水和を施した最高の状態で遺体を引き渡せば、遺族は最愛の人の遺体を受け取っているという確信が持てる」

 遺体に再水和を施すには、エルナンデス・カルデナス氏が開発した溶液を水300リットルと混ぜて浴槽に満たし、それに遺体を数日間浸しておく。

 腐敗した遺体を再水和するには3~5日かかり、干からびてミイラ化した遺体は1週間を要する。