温暖化で解ける永久凍土 傾く建物、有害物質放出の恐れも シベリア
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【12月15日 AFP】世界有数の寒冷地であるロシア・シベリア(Siberia)東部ヤクーツク(Yakutsk)では、温暖化の影響を受けて永久凍土が危険なレベルにまで解け始めている。
ヤクーツクの9階建てアパートに住むエドゥアルド・ロマノフ(Eduard Romanov)さんは、アパートを支える梁(はり)が沈下し、ひびが入り始めている箇所を見せながら、建物全体が不安定になっていると説明した。
建設作業員で環境活動家でもあるロマノフさんは、「2年前から建物がゆがみ始め、40センチほど傾いた」と語った。
世界で唯一、永久凍土の調査を行っている「メルニコフ永久凍土研究所(Melnikov Permafrost Institute)」の科学者によると、ヤクーツクの平均気温は過去10年で2.5度上昇した。地元住民によると、20年前までは気温が氷点下55度以下になると学校が数週間休校になったが、今ではそのように極端な寒さが続くことはまれだという。
ヤクーツク市内にある旧ソ連時代に建てられた大半のアパートはコンクリート製で、床下の通気性を考えて建物が支柱の上に載せられた構造になっている。このため永久凍土に熱が伝わることはないが、安定性を保つには地面が凍っていることが条件となる。
だが、夏の気温上昇によって、この永久凍土が破壊される可能性が出てきている。永久凍土が解けると、道路や建物など、その上に造られているものは沈んでしまう。
ロシアは、国土の約65%が永久凍土だ。人口約30万人のヤクーツクは、永久凍土に造られた都市としては世界最大規模となる。
古い建物の建設時は、温暖化については全く考慮されておらず、1960年代の建築基準では、支柱は永久凍土層の6メートルの深さまで掘ることが定められていた。だが温暖化が進んだ今は、この深さでは不十分となり、ひびだらけの建物や、既に取り壊された建物もある。
北極圏に領土を持つロシアは、他国に比べ約2.5倍の速さで温暖化が進んでいる。ロシアの天然資源環境省は今年公表した報告書で、永久凍土の溶解は、水資源、下水施設、原油パイプラインに影響する他、永久凍土に閉じ込められている化学物質、病原体、放射性物質などの放出につながる危険があると指摘している。