【12月6日 AFP】(更新)化石燃料の燃焼などによる二酸化炭素(CO2)の世界排出量が、2018年には2.7%増加する見通しだとする研究論文が5日、学術誌「地球システム科学データ(Earth System Science Data)」に発表された。論文は80人近くの科学者が共同執筆したもので、世界の気候変動との闘いは「完全に脱線している」と警告している。

 世界のCO2排出量は2016年までの3年間にわたり横ばいが続き、人為的な温室効果ガス排出量がついにピークを迎えたとの期待が高まったが、2017年には1.6%増と再び増加していた。今回の研究では、太陽光・風力発電の急速な普及やエネルギー効率の向上が見られる一方、海運や航空を含む貨物・旅客運送分野での需要がそれを上回るペースで増加していることが示された。

 論文の筆頭執筆者で、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)ティンダル気候変動研究センター(Tyndall Centre for Climate Research)のコリーヌ・ルケレ(Corinne le Quere)所長は、CO2排出量の増加により、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で定められた目標の達成が危ぶまれていると指摘。「再生可能エネルギーの推進だけでは不十分」であり、「脱炭素の取り組みを経済全体で拡大する必要がある」と訴えている。

 2015年に締結されたパリ協定は、産業革命前の水準からの気温上昇幅が2度を「十分に下回る」水準に地球温暖化を抑えることを求めている。科学者らは、現在の気温上昇の傾向が続けば、この目標はすぐにでも人類の手から滑り落ちかねないと指摘する。

 今回の研究結果で、過去5~6年間に見られた世界排出量の変動が、石炭消費量の変化を追跡していることが明らかになった。

 ルケレ所長は仏パリで記者団に対し、特に「この傾向は中国の石炭消費量の増減と大きく関係している」と語った。

 中国のCO2排出量は世界合計の27%を占め、2018年には4.7%増加する見通し。研究者らは、石炭消費が再び2000年代半ばの急増を見せる可能性は低いとしても、今後数十年間にわたり石炭が中国のエネルギーシステムの中心となる可能性は高いと指摘している。

 米国については、2018年のCO2排出量は世界合計の15%、増加率は約2.5%となる見通しだ。増加分の大半は、例年になく暑い夏と寒い冬に由来するものと考えられる。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は低迷する国内石炭産業の復活を図っているが、安価な天然ガス、風力、太陽光発電による石炭の代替が続く中、米国のCO2排出量は2019年に再び減少を始めると予想されている。

 インドでは三大化石燃料の石油、石炭、天然ガスすべてで消費が増えており、CO2排出量は世界合計の7%、増加率は6%を超えるとみられる。

 欧州連合(EU)の2018年の排出量はわずかに減少し、世界合計の約10%となる見通し。(c)AFP/Marlowe HOOD