世界初、死亡ドナーからの子宮移植で出産 ブラジル
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【12月5日 AFP】(更新)ブラジルで、亡くなった人から子宮の提供を受けた女性が健康な赤ちゃんを産んでいたことが分かった。死亡したドナーから移植された子宮での出産は世界で初めて。手術を実施したブラジルのサンパウロ大学(University of Sao Paulo)の研究チームは、子宮の問題で子どもを産めない女性にとって新たな選択肢になるとしている。成果は5日、英医学専門誌「ランセット(Lancet)」で発表された。
移植手術が行われたのは2016年9月。脳卒中で亡くなった45歳の女性から摘出した子宮を、珍しい病気のため生まれつき子宮がない32歳の女性に移植した。その後、体外受精で準備していた受精卵を着床させ、翌年12月、女性は帝王切開で女児を出産したという。
最近まで、子宮の問題で妊娠できない女性が子どもを持つ方法は、養子縁組か代理出産しかなかった。今回の手術は、亡くなったドナーからの子宮移植で出産できることを示す画期的な成果だ。
生体ドナーから子宮を提供されて出産に至った例は、2013年にスウェーデンで初めて成功して以降、これまでに計11件ある。だが、子宮の移植を必要とする女性は生体ドナーの候補よりもはるかに多いため、医師は死亡した女性の子宮の移植がうまくいくかどうかに関心を寄せていた。
死亡した女性からの子宮移植は米国やチェコ、トルコで計10人に行われたが、どれもうまくいかなかったとされる。
サンパウロ大教育病院のダニ・エイゼンバーグ(Dani Ejzenberg)医師は、今回の成果について「子宮が原因の不妊に悩む女性にとって、実際に取り得る新たな選択肢が生まれた」と説明。「医療の歴史での画期的な出来事」だとし、「死亡時の臓器提供の意思を示している人は生体ドナーよりもずっと多いため、潜在的なドナー人口が大きく広がったことになる」と述べている。
現在、10~15%の夫婦が不妊症の問題を抱えている。(c)AFP/Marlowe HOOD