イエスの処刑命じた総督名? 2000年前の指輪に「ピラト」の刻印
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【12月3日 AFP】イスラエルの研究チームはこのほど、エルサレム周辺で発見された古代の指輪に、イエス・キリスト(Jesus Christ)の処刑を命じた人物として聖書に記載されているローマ帝国の総督、ポンテオ・ピラト(Pontius Pilate)の名前が刻印されている可能性があると発表した。ピラトの名前が記された現存する遺物はほとんどなく、実際に本人の名前であれば極めて珍しい例となる。
考古学誌イスラエル・エクスプロレーション・ジャーナル(Israel Exploration Journal)に掲載された論文によると、この指輪は約50年前に見つかったもので制作年代は約2000年前。銅の合金製で押印に使用されていた。
研究チームは指輪の刻印がギリシャ語で「ピラトの(of Pilatus)」と読めることを確認した。このほか、クラテールと呼ばれるワイン容器も描かれていた。
指輪の発掘場所はエルサレム(Jerusalem)とベツレヘム(Bethlehem)の近郊で、イスラエルが占領するヨルダン川西岸(West Bank)にあるヘロデ王(Herod the Great)の広大な宮殿遺跡「ヘロディウム(Herodium)」。この宮殿は後にユダヤ人がローマ帝国に対する反乱を起こした際、要塞(ようさい)として使われた。
研究チームは「ピラトという名前は珍しいので、この指輪がピラト本人のものだったということもあり得なくはない。しかし、指輪が簡素な全金属製の個人の押印用で、モチーフもピラトの時代以前からユダヤ(Judaea)地域のユダヤ人の間でよく知られたものである点からして、総督がこの指輪を使っていたとは考えにくい」と説明。一方で、ピラトの関係者や全く別人のものだった可能性もあるとしている。
イスラエル博物館(Israel Museum)によると、ピラトの時代にさかのぼる本人の名前が刻まれた遺物は、イスラエルの地中海沿いの港湾遺跡「カイサリア(Caesarea)」で発見された石しか現存しないという。この石は同博物館が所蔵している。(c)AFP