【11月29日 AFP】初期段階の胎盤を再現した臓器モデルの作製に成功したとする研究結果が28日発表された。この実験室で培養されたモデルによって、生殖障害や妊娠中の合併症などに関する理解が一変する可能性もある。

 国連(UN)によると、妊娠や出産に関連する予防可能な病気が原因で、世界では毎年30万人の女性が死亡しているという。

 死亡ケースの多くは妊娠初期数週間に胎盤で起きる事象と関係がある。胎盤は発育中の胎児を母親の子宮に接続する臓器で、妊娠時に形成される。だが、胎児と母胎の双方の変化は女性の体内で起こるため、胎盤は最も不明な点が多い臓器の一つとなっている。

 今回、子宮外で胎盤の培養に成功したと発表したのは、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)の研究チーム。この胎盤は1年以上にわたって成長を続け、主要な機能の大半を確認できたという。

 胎盤をモデル化したオルガノイド(細胞集合体)作製の画期的な成功は、妊娠初期の変化を観察する手段を提供し、最終的には、妊婦の命を危険にさらす病気への対処法につながる可能性もあると、研究チームは主張している。

 ケンブリッジ大病理学部のアシュリー・モフェット(Ashley Moffett)氏は、記者団に対し、「胎盤は子宮内の胎児のためのあらゆる機能を持つ。胎児を保護し、多量のホルモンや他の生成物質を分泌する。そのうちの何かが正しく機能していないと、妊娠の成功には至らない」と語った。

 製品の開発や革新的発明も、医学研究では動物を出発点とすることが多い。だが、胎盤の場合は人と動物の違いが大きすぎるので、研究に適したモデルを提供できない。そのため、体外で胎盤細胞を培養する取り組みは、この30年でますます増えている。

 モフェット氏と研究チームは、トロフォブラスト(栄養膜)細胞を同定・単離することで、実験室環境においてミニチュアモデルの胎盤を育てることに成功した。トロホブラストは胎児に栄養を与えるとともに、胎盤が子宮に付着するのを助ける膜だ。

 オルガノイドは長期間にわたって成長を続け、実際と同じタンパク質やホルモンも分泌した。これら分泌物は、母体の自然機能に影響を及ぼすと考えられるものだ。hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)などの妊娠ホルモンの存在は、店頭で購入できる家庭用妊娠検査薬でも確認できた。

 胎盤を模した実験用モデルが得られると、妊娠初期に放出される特定の化学物質や信号などを単離することが可能になり、その後の妊娠期間中の健康リスクについて調べる検査方法の開発にもつながると、研究者らは期待を寄せる。モフェット氏は、「ペトリ皿の中にあるこの実験モデルを用いて、そうした研究を進めることが可能になった」とAFPの取材に語った。

 今回の研究をまとめた論文は英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。(c)AFP/Patrick GALEY