【11月23日 AFP】スイス金融大手UBS、英政治コンサルティング企業ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)、そしてルノー・日産連合(Renault-Nissan)──世界のビジネス界で透明性を求める声が高まる中、内部告発者の存在感が高まっている。

 仏自動車大手ルノー(Renault)の最高経営責任者(CEO)で日産自動車(Nissan Motor)の会長だったカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)容疑者は、日産の報酬の過少申告や会社資金の私的流用の疑いで日本の警察当局に逮捕された。内部告発者に関する情報もいくらか明らかになったが、動機は不明なままだ。

 豪日研究財団(FAJS)のジェニー・コルベット(Jenny Corbett)研究員は、ゴーン容疑者逮捕の経緯について「日本には内部告発の文化がきちんと確立しておらず、異例だ」と指摘。「社内に何らかの緊張関係や権力争いがあるのかもしれない」と述べた。

 ただ、フランスで企業倫理の啓発活動に取り組む「企業倫理クラブ(CEA)」のパトリック・ウィドロシャー(Patrick Widloecher)氏によれば、ゴーン容疑者を告発した日産社員の動機がたとえ個人的または政治的なものだったとしても、告発の内容が真実でさえあれば、内部告発者としての立場は何ら損なわれないという。

「内部告発者には、さまざまな動機がある。共通の利益のためであったり、自身を守るためであったり、個人的な報復のためであったり」。フランス郵政公社の倫理担当役員を務めた経験を持つウィドロシャー氏はこのように述べ、ゴーン容疑者に対する内部告発はビジネス界が直面する大きな流れの中で起きたことだとの見方を示した。

「現代においては長く隠し通せるものなどない──情報は、あっという間に拡散する」

■国際レベルのうねり

「権力の乱用と闘おう」という強い思いに突き動かされ「国際レベルで大きなうねりが生まれている」と話すのは、腐敗のない世界を目指す国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」のフランス支部で汚職防止に取り組む専門家、ニコールマリー・メイエ(Nicole-Marie Meyer)氏だ。「政財界のリーダーたちが市民から責任を問われる傾向は、ますます強まっている」

 法律事務所フレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー(Freshfields Bruckaus Deringer)が昨年発表した研究によると、米国、アジア、欧州の2500人を対象に行った調査で、企業幹部の2人に1人が内部告発をした、またはされた経験があると答えた。

 また、米経営誌「ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)」には、内部告発者こそ健全な企業の証しであり、社内トラブルの解決手段が整備されリスク軽減に熱心だということを示しているとする研究が掲載された。

 この研究を行ったスティーブン・スタッベン(Stephen Stubben)氏とカイル・ウェルチ(Kyle Welch)氏によれば、こうした企業は利益率も高く、訴訟沙汰になることも少なければ、訴訟になった場合の和解金の額も低いことが多いという。(c)AFP/Valentin BONTEMPS