【11月20日 AFP】報酬を過少申告した疑いがあるとして逮捕された日産自動車(Nissan Motor)の会長カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)容疑者は、企業の経営再建を迅速に進めるために大なたを振るう、すご腕の仕事人間として長年、世界の自動車メーカーの経営者らの間で突出した存在感を示してきた。

 ブラジル生まれのゴーン容疑者は、仏ルノー(Renault)、日産自動車、三菱自動車(Mitsubishi Motors)の会長を兼務し、自動車産業に巨大な3社連合を誕生させた。3社合わせた従業員数は世界で計47万人、工場数は122か所に上り、昨年の車両販売台数は1060万台に達した。

 だが、ゴーン容疑者が日産自動車の会長として得た報酬を関東財務局に過少申告した容疑で逮捕されたとの報を受け、グループは現在、窮地に陥っているとみられる。

 日産側は、内部通報を受けて数か月にわたる調査を行った結果、「複数の重大な不正行為」が発覚したとして、取締役会にゴーン容疑者の解任を提案すると発表した。

■報酬めぐる仏政府との確執

 ゴーン容疑者が報酬をめぐって苦境に立たされたのは今回が初めてではない。とりわけ、3社連合から支払われる報酬の総額については、これまでにもたびたび取り沙汰されてきた。その額はフランスの最高経営責任者(CEO)の中で最高水準であり、また日本企業の外国人取締役に支払われる報酬としても同様だ。

 昨年には、3社連合が取締役らに「裏賞与」を支給する目的でオランダに新会社を設立する計画を立てていると報じられたが、同容疑者はこれを否定。

 また、今年2月には、ルノー株15%を保有する仏政府が、ゴーン容疑者が昨年、ルノーCEOとして手にした報酬725万ユーロ(約9億3000万円)は「多過ぎる」として、30%の減額を受け入れさせた。

 仏政府は2016年にもルノーの株主総会で、54%の株主らと共に725万ユーロという同昨年の報酬額に断固として反対していた。この投票結果はルノーの取締役会で覆されたが、当時、仏経済相だったエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)現大統領が立法措置による介入も辞さないと脅しをかけたことにより、ゴーン容疑者は後に報酬削減を受け入れた。

 ゴーン容疑者は今年6月、英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)とのインタビューで「今日、報酬は以前よりも入念に精査されている」と述べつつ、「『自分は報酬をもらいすぎだ』と言うCEOはいないだろう」と語っている。