【11月9日 AFP】マルハナバチの巣の中での行動を観察することで、殺虫剤によってハチの社会的行動が損なわれ、餌の摂取や幼虫の世話に支障を来す様子が確認できたとする研究結果を、米ハーバード大学(Harvard University)の研究チームが8日発表した。

 広く使用されているネオニコチノイド系農薬に、ハナバチが巣外で蜜を探し集める能力を疎外する影響があることは、これまでの研究で示されている。今回の新たな発見は、作物の受粉に欠かせないハナバチの健康が殺虫剤に脅かされているという長年の懸念を強める内容だ。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された研究では、内側を巣のエリアと採餌エリアに分けた箱を12個用意。内部にカメラを設置し、マルハナバチの行動に現れる変化を記録した。

 観察対象のハチのコロニーは、自然環境でハチが接する濃度と同レベルのネオニコチノイド系殺虫剤イミダクロプリドに暴露させたグループと、農薬の影響を受けないグループに分けた。

 すると、殺虫剤を混ぜた蜜を餌として与えられたハチは、農薬の入っていない餌を与えた対象グループのハチと比べて、さまざまな行動面で社会性が低下することが分かった。

「ネオニコチノイド系殺虫剤にさらされた結果、働きバチの巣の中での行動には、測定可能な変化が現れた」と研究チームは報告している。「働きバチは活動的でなくなり、幼虫に餌を運んだり世話したりすることが減り、巣の隅にじっとしていることが多くなった」。この傾向は、特に夜間に顕著にみられた。

 研究を率いたハーバード大の博士研究員ジェームズ・クラル(James Crall)氏によると、ハナバチには非常にしっかりした約24時間周期の体内時計がある。日中は測定可能なレベルの変化は見られなかったが、夜には最も顕著に違いが観察できたという。

 実験では、殺虫剤にさらされたハチがうまく体温調整できなくなることや、巣房を守る蜜ろうのふたをうまく作れなくなることも確認された。クラル氏によると、殺虫剤の影響を受けたコロニーでは、ほとんど全くふたが作られなかった。「つまり、ハチが巣を機能的に再構築する能力を失っているということだ」と同氏は述べている。

 研究チームはこの発見について、これまで指摘されてきたネオニコチノイド系殺虫剤の有害性を示す証拠を裏付けるものだとしている。(c)AFP