フランス初、公立学校で制服導入 背景に「格差」問題
このニュースをシェア
【11月6日 AFP】パリの東にある町プロバン(Provins)の公立小学校で5日、フランスの公立学校で初となる制服を着た児童らが登校した。フランスで裕福な家庭の子どもとそうでない家庭の子どもの「学力格差」拡大が問題となる中、社会的差別を是正する方策の一つとして町長らが導入を推進した。
「大丈夫かなあってちょっと思ったんだけど、制服は好きだよ。ハリー・ポッター(Harry Potter)みたいだし」。ポロシャツに水色のセーターの制服に身を包んだ男子児童(8)は、人気ファンタジーの主人公の名前を挙げながら、校門近くで人生初の制服体験の感想を語ってくれた。
中世の城壁や街並みが残り、世界遺産(World Heritage)にも登録されているプロバンでは今年6月、62%の保護者の賛成で制服の導入が決まった。制服には町のシンボル「セザール(カエサル)の塔(Cesar Tower)」をかたどった紋章と「自由、平等、博愛」というフランスの国是に当たる標語が縫い付けられている。
制服はズボンとジャケットを合わせて137ユーロ(約1万7700円)。家計が苦しい場合には補助金も用意されている。ただ、当局は制服を義務とはしなかったため、この日、制服を着て登校した児童は数人だけだった。
社会的差別への対策として制服導入の旗を振った保守派・共和党のオリビエ・ラバンカ(Olivier Lavenka)町長は「だいたい半分の児童が制服で登校するようになるでしょう。今はまだ試験段階ですが、数年後には成果が目に見えるはずです」と期待を示す。
フランスでは伝統的に、制服は富裕層が住む地区のカトリック系学校をはじめ、私立学校で採用されてきた。しかし最近では、制服が特に貧困地区で社会的連帯を促し、子どもの服装の違いから生まれることもある反感などを和らげる方策として、制服の導入を求める声が多くなっている。
経済協力開発機構(OECD)の統計によれば、フランスでは貧困地区に住む子どもは富裕地区の子どもに比べて、困難な状況に陥る可能性が4倍も高い。この点に関してフランスは主要36か国の中で最悪で、ブラジルやメキシコよりもひどい状態だ。