【10月31日 AFP】今年3月に死去した宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の遺品が31日から競売にかけられる。博士が震える手で署名した博士論文などが注目されている。

 米競売大手クリスティーズ(Christie's)のオークションに出品される遺品は30日、英ロンドンで公開された。ホーキング博士が使用した車いすの一つや、母印が押されたベストセラー書籍「ホーキング、宇宙を語る(A Brief History of Time)」(1988年)、米人気アニメ「ザ・シンプソンズ(The Simpsons)」にホーキング博士が登場した回の台本など計22点が出品される。

 落札予想価格が最も高額なのは、博士論文「膨張する宇宙の特性について(Properties of expanding universes)」完成当時の複製5部のうちの1部で、10万~15万ポンド(約1440万~2100万円)と予想されている。

 もう一つの目玉は、ホーキング博士が1980年代後半~90年半ばに、ジョイスティックを使って自ら操縦していた赤い革張りの車いす。こちらは1万~1万5000ポンド(約140万~210万円)で落札されるとみられている。

 クリスティーズで古文書部門を統括するトーマス・ベニングス(Thomas Venning)氏はAFPに対し「よく知られているように、ホーキング氏はかなり危険なドライバーだった。チャールズ皇太子(Prince Charles)と会見した際に、皇太子の足をひいたこともある」と話した。

 競売ではさらに1974年に発表して大きな影響を与えた「ホーキング放射」論文など、ホーキング博士自身が保存していた重要論文の複製も出品され、3000~5000ポンド(約43万~72万円)で落札されると予想されている。

 また「ホーキング、宇宙を語る」の複製にはページ内に母印が添えられており、2000~3000ポンド(約28万~43万円)で落札されるとみられている。

 さらに、ホーキング博士が本人役で何度も声優出演した米人気アニメ「ザ・シンプソンズ」の台本も、2000~3000ポンドで落札される見込みだ。

 ベニングス氏によると、オークションは31日~11月8日までオンライン上で行われる予定。すでに世界中から大きな関心が寄せられているという。

 競売の売り上げはホーキング博士の遺族へ贈られるが、車いすの売上金はMND(運動ニューロン病)協会(Motor Neurone Disease Association)とスティーブン・ホーキング財団(Stephen Hawking Foundation)に寄付されるという。(c)AFP/Alice RITCHIE