【10月29日 AFP】(更新、写真追加)ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相(64)は29日、現任期の2021年の満了と同時に、首相を退任する意向を表明した。脆弱(ぜいじゃく)な連立体制を揺るがしてきた一連の政治危機に歯止めをかけることが狙い。

 しばしば「世界で最も影響力のある女性」や「欧州の事実上の指導者」と称賛されてきたメルケル氏は、退任予定の発表によって連立政権内での激しい争いに幕を引き、現政権が国政運営に集中できるようになることを期待していると述べた。

 メルケル氏は党本部で行った記者会見で、「きょうこそ新たな章を開く時だ」と表明。これまで18年間率いてきたキリスト教民主同盟(CDU)が大幅に得票率を下げた28日の中部ヘッセン(Hesse)州議会選は「転機」ではあるとしつつ、CDUを含む主流政党が前進する方法を見出すチャンスともなり得ると指摘した。

 メルケル氏は政界引退に向けた第一歩として、CDUが12月の党大会で実施する党首選への再出馬を断念する。4期13年間にわたり首相を務めてきたメルケル氏は、来年の選挙へ立候補するつもりも、首相任期の延長を試みるつもりもないと述べている。

 メルケル氏の電撃発表を受け、少なくとも4人が後任の党首候補に名乗りを上げている。ただメルケル氏自ら後継者を指名する考えはなく、「党が下す民主的な決断を受け入れる」としている。

「永遠の首相」とも評されてきたメルケル氏だが、長い退陣計画が予定通りに進まない可能性もある。連立相手である社会民主党(SPD)が、2021年を待たずに連立政権を崩壊させたとすれば、メルケル氏の引退が早まることも考えられる。

 メルケル氏の引退に向かう第一歩が、欧州連合(EU)中に波紋を呼ぶのは必至。メルケル氏はEU内で、繰り返される世界的な危機、英国のEU離脱問題や、予測不能な同盟国となった米国を前に、断固かつ揺るぎない防波堤の役割を果たしてきた。

 世界的な知名度を誇るメルケル氏だが、ドイツ政界を退いた後に欧州連合内でその影響力を行使するという臆測については否定。EUの行政執行機関である欧州委員会(European Commission)でのポストを模索していく予定はないと話している。(c)AFP