【10月28日 AFP】内戦下のシリアで2015年に拘束され、先日解放されたフリージャーナリストの安田純平(Jumpei Yasuda)さんは25日夜に無事帰国し、喜びに沸く親族や支援者らの歓迎を受けた。拘束されていた3年余りを「地獄」だったと振り返る安田さんは、妻や両親との再会を果たした。

 ただ、海外で人質になった安田さんのような日本人は、紛争地域に渡航する捨て身の行動で厳しい批判にさらされる。安田さんは帰国前からインターネットなどで、無謀さに対する非難から日本人ではないとの言いがかりまで、怒りに満ちたさまざまな誹謗(ひぼう)中傷を浴びせられている。ツイッター(Twitter)では、世間に迷惑をかけているとの投稿や、安田さんを「非国民」扱いするつぶやきもみられる。

 安田さんはイラク戦争などに関する本を執筆し、日本のテレビで報道が取り上げられたこともある。今回、安田さんに向けられている反発は、人質となっていた記者が解放された際の他の国々の受け止め方とは大きく異なる。イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に拘束されたフランス人記者4人が解放された時には、当時のフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領が帰国した4人を出迎えた。

■自己責任論

 ただ、日本では解放された人質について賛否両論が出ることが多く、拘束されたのは自己責任だとする批判も珍しくない。上智大学(Sophia University)の寺田俊郎(Toshiro Terada)教授(哲学)は、人質は被害者であり法律に違反していないのに謝罪を求められるのは奇妙なことであるものの、それが日本社会の一部のものの考え方だと指摘し、安田さんは社会に迷惑をかけたとして非難されているとの見方を示した。

 人質に対する反応の衝撃的な一例を挙げると、2004年にイラクで現地の武装集団の人質となり、その後解放された日本人3人は、帰国直後から自己責任論にさらされた。武装集団はイラクに派遣された自衛隊の非戦闘部隊の撤退を要求し、これに応じなければ3人を殺害すると警告した。

 しかし、当時の小泉純一郎(Junichiro Koizumi)首相は要求に応じず、人質の家族との面会も断り、強硬な姿勢が日本社会の一部で称賛された。右派メディアに支持された日本政府も、当時戦闘地域だったイラクに渡航自粛勧告を無視して入国した3人を無責任な若者たちと捉えた。

 このうち今井紀明(Noriaki Imai)さんは最近、「死ね」や「ばか」などと書かれている手紙を数通受け取った。今井さんによると、ネット上でのバッシングは10年続いたという。