【10月27日 AFP】出稼ぎ先の中東とロシアで長時間にわたって過酷な状況で働いていた脱北者の男性が26日、米首都ワシントンで記者会見を開き、北朝鮮が多くの人々を国外に派遣して強制労働に従事させている実態への懸念を表明し、この問題に国際的な関心を寄せるよう訴えた。

 ノ・ヒチャン(Roh Hui Chang)さんは、自分と同じような苦境にある北朝鮮の人々は大勢いるとし、「現状を知る情報筋によると、私が国外にいた頃と状況は何も変わっていない」と主張。北朝鮮に科されている経済制裁に言及した上で、出稼ぎ労働者の数については、「すぐには減りそうにない。彼らが稼ぐ外貨が欠かせないものになっているので、むしろ増加していく」との見方を示した。

 北朝鮮では多数の人々が貧困にあえぐ母国よりは人並みの生活が送れるのではないかとの期待から、借金をしてでも出稼ぎ労働に就いている。しかし、賃金の大半を北朝鮮政府の指導部が着服するため、数年間働いて帰国しても、手元には100ドル(約1万1200円)も残らないケースもあるという。

 ノさんは中東各地で7年間──最も長期間働いていたのはクウェート──毎日午前5時から午後11時まで建設業に従事していた。日中の猛烈な暑さのせいで仕事が終わらず、深夜まで何時間も残業することもしょっちゅうあった。わずか20平方メートルの部屋に10~30人の労働者が押し込まれ、荷物を置くスペースもほとんどなかったという。その後、渡ったロシアでも過酷な条件下での労働を強いられ、食べ物は塩を入れたご飯しか与えられず、ノさんは2年間働いた後、脱走。2~3か月間、茂みに隠れながら移動し、2014年に韓国にたどり着いた。

 北朝鮮が国外に派遣している出稼ぎ労働者の実態については、これまでにもたびたび報じられてきたが、人数については報告によって大きなばらつきがある。韓国政府の支援を受けた韓国統一研究院(Korea Institute for National Unification)が脱北者の話として伝えた2016年の報道では、北朝鮮は計27か国に年間1万人の労働者を派遣することを目標に掲げている。

 こうした労働者の大多数は、北朝鮮の同盟国である中国とロシアに派遣されているが、ポーランドでも確認されており、欧州議会(European Parliament)の監視対象となっている。(c)AFP