【10月25日 AFP】女性の産道の大きさや形状には世界各地で地域差があるにもかかわらず、大半の医学書は欧州の女性の体形に基づいており、健康リスクにつながる可能性があると警告する研究結果が24日に明らかになった。

 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された報告は、出産時に胎児が通る骨盤管の深さや広さは一様ではなく、出産を単一の基準に押し込めて扱うことは母体と胎児に危害を及ぼしかねないと警告している。

 今回の研究チームを率いた、英ローハンプトン大学(University of Roehampton)上級講師(進化人類学)のリア・ベッティ(Lia Betti)氏は、AFPの取材に対し「産科医の訓練は、欧州の女性の骨盤の形態に基づいて開発されたもの」だと指摘。「しかし骨盤や出産の形態は集団によって差がある」「特に多民族社会においては、アップデートが必要だと思う」と述べた。

 例えば、サハラ以南アフリカ出身の女性は産道が深い傾向があり、対照的にアメリカ先住民の女性は概して産道の幅が広い傾向があるという。また欧州とアジアの女性はその二つの中間で、地域ごとに特徴がある。

 こうした差異が重要なのは、胎児は誕生時に産道を通過する際、産道の形に頭と肩が沿うよう体を回転させるからだ。「医学書に説明されている産道のモデルが、実際の女性の産道と大きく異なる場合、胎児の動きも予測から外れる可能性がある」とベッティ氏は指摘している。

 世界保健機関(WHO)によると、毎年約30万人の女性が出産の最中もしくは出産後まもなく死亡しており、その多くは「出産の合併症」が理由だという。(c)AFP/Marlowe HOOD