DNA検査の「自分探し」に米国熱狂、人種差別助長への警鐘も
このニュースをシェア
【10月27日 AFP】単なる好奇心、あるいは自分は何者かという問いの答えを見つけるため、何百万人もの米国人が、インターネットで販売されているDNA検査キットを使って、自身のルーツを調べている。
だが、この「自分探し」への熱狂が人種的なステレオタイプを助長し、人種間の分断が深まる恐れがあると、専門家らは警鐘を鳴らしている。
少量の唾液から顧客のゲノム(全遺伝子情報)を解析し、他人のDNAとの比較からそれぞれの出自を調べるサービスを、多くの企業が100ドル(約1万1200円)程度の検査料で提供している。
元々、国民の大部分が移民だった米国では、家系図が人々の想像をかき立てる。このためDNA検査は人気が高い。DNA検査大手、アンセストリー(Ancestry)と23andMeの2社によると、これまで検査を受けた人の数は1500万人に達しているという。
■DNA検査で白人至上主義者は変わらない
DNA検査を推奨する側は、新しい技術によって人々の多様な背景が明らかになり、異なる人種に対して寛容になれると強調する。
23andMeのウェブサイトでは、奴隷の子孫の1人の黒人と、奴隷の所有主だった家族の子孫の1人の白人が、同社のDNA検査によって共通の祖先を持つことを知り、「和解」のしるしとして一緒に祖先の墓参りをしているというエピソードが紹介されている。
だが、カリフォルニア大学(University of California)の研究者らは、白人至上主義者は自分の祖先に黒人がいると分かっても、自分の思想を変えるのではなく、慌ててその結果をなかったものにしようとすると指摘する。
社会学者のジョアン・ドノバン(Joan Donovan)氏とアーロン・パノフスキー(Aaron Panofsky)氏は、極右系ウェブサイト「ストームフロント(Stormfront)」での討論に注目した。ここでは複数の利用者が、DNA検査で「悪い知らせ」を受け取ったと投稿していた。
2人の研究者は「白人至上主義者がDNA検査の結果を受けて、人種に関する自らのイデオロギーを変えるという考えには根拠がない。さらに重要なことに、遺伝子情報は白人至上主義者の考え方を変える手段とはなり得ない」と説明する。