中国のトキつがい、中日友好の新たな懸け橋に
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【10月19日 Xinhua News】中国のトキのつがい、雄の「楼楼」(ロウロウ)と雌の「関関」(グワングワン)を乗せたヘリコプターが17日午後5時12分、ゆっくりと新潟県の佐渡空港に降り立った。その後、日本での新しい家となる佐渡トキ保護センターへと移送された。中国が日本にトキを提供するのは2007年以来11年ぶり。
同センターの獣医師、金子良則さんはつがいのトキに一通りの検査を行い「2羽とも健康。トキはすでに日中友好交流の懸け橋となっていて、このような交流の機会が増えてほしい」と期待を寄せた上で「心を込めてトキの世話をするので安心してください」と語った。
同センターの所長、長谷川修治さんは、2羽を早く現地の環境に順応させるため、センターはすでに各種準備を整えていると紹介。日本の食べ物に慣れない可能性を考え、中国から輸入したドジョウを用意、ドジョウは2羽の日本到着後初めての「ご馳走」になったと述べた。
長谷川さんは、今後早いうちにより詳細な検査を行い、2羽の状態を観察し、実際の状況に応じて今後の飼育方針を決定すると表明。健康状態が良ければ、できるだけ早く繁殖に移りたいと語った。また、新たに中国から来た2羽は日本のトキ個体群の回復と遺伝的多様化にとって極めて大きな意味があると述べた。
センターで順応のため約1週間過ごし検疫を受けた後、「楼楼」と「関関」は佐渡市のトキの森公園に移される。
トキの森公園の専任ガイド、品川三郎さんは2羽が来ることを本当に良いと評価。中国がまた日本のトキに兄弟姉妹を贈ってくれたことに感謝した上で、新しい遺伝子が加わり新たな人工繁殖がなされ、トキの数がますます増えると期待を寄せた。
トキはすでに佐渡島の代名詞となっており、トキの森公園だけでなく、佐渡島の田んぼでも野生のトキの美しい姿を見ることができる。中国のトキがいなければ、日本では20世紀に野生のトキとお別れしなければならなかった。
環境省佐渡自然保護官事務所の佐藤知生・自然保護官によると、トキは江戸時代には日本国内に広く分布していたが、乱獲や地域開発、農薬の乱用などで一度は絶滅の危機にひんした。日本産のトキは「キン」の死で2003年に絶滅した。
佐藤さんは、日中両国は1980年代に共同でトキの保護を開始し、中国は日本に5羽のトキを提供、日本があらためてトキを繁殖させる手助けをし、日本は政府と民間の保護事業を通じて中国トキの生息地の保護を支援してきたと語った。日本で現在繁殖しているトキは全て中国産トキの子孫で、日本国内に現在約550羽のトキが生息、うち372羽は野生下での自然繁殖による推定個体数だという。
トキは佐渡市の地域経済振興の目玉だ。トキの名を冠した日本酒や牛乳などの製品が多く、トキをかたどった記念品やぬいぐるみも人気を集めている。佐渡産の米もトキのおかげで利益を上げている。トキは田んぼで活動することが多いため、トキへの影響を考慮し、佐渡島の稲作農家は、無農薬かあるいはできるだけ農薬の使用を減らしている。市では2008年から「朱鷺(トキ)と暮らす郷づくり」認証制度を立ち上げ、同制度で認証された米は日本全国の消費者に高く評価され、日本産の高級米の中でも徐々にその一角を占めるようになった。
佐渡市への観光客の多くはトキを見にやって来る。同市産業観光部観光振興課の祝雅之課長は、佐渡島の人口は5万5千人しかないが、毎年約20万人が自然の中を飛ぶトキの姿を見ようとトキの森公園を訪れると説明した。
同公園専任ガイドの品川さんが語ったように、多くの人は餌を探すトキを間近に見かけると、まるで魔法のごとく、とても幸せな事に出会ったと感じる。(c)Xinhua News/AFPBB News