インスタグラムは若手バレリーナにとって「毒」、世界的プリマが苦言
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【11月3日 AFP】体の非常に柔軟なバレエダンサーたちが、驚くような技を披露する動画がインターネット上で広まっている。だが、世界のトップバレリーナの一人は、そうした動画が若いバレリーナの育成を危機にさらしていると警告している。
ロシア・サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)のマリインスキー・バレエ団(Mariinsky Ballet)のプリマバレリーナであるディアナ・ビシニョーワ(Diana Vishneva)さん(42)は、AFPの取材に対し、インスタグラム(Instagram)やユーチューブ(YouTube)で人気のあるそうした動画は誤った期待を抱かせるもので、若いダンサーにとっては妨げや危険にさえなりかねないと語った。
ビシニョーワさんは、「若いダンサーたちが、リハーサルの進行よりも自分の携帯電話の方に夢中な様子をしばしば見かける」と言う。「中には、ユーチューブで目にするものを十分に理解できるほどの専門性や成熟さをまだ身につけていないダンサーたちもいる」「こうしたダンサーたちは、表面的なことや素晴らしい肉体には目を向けるが、その裏に隠された努力には気づかない」
4か月前に第1子を出産し、仏パリのオペラ座で舞台に復帰したばかりのビシニョーワさんは、ニジンスキー(Nijinsky)やヌレエフ(Nureyev)、アンナ・パブロワ(Anna Pavlova)、ナタリア・マカロワ(Natalia Makarova)らを輩出した伝説的バレエ学校、ワガノワ・バレエ・アカデミー(Vaganova Ballet Academy)の元優等生でもある。
ビシニョーワさんが懸念するのは、とりわけインスタグラムに投稿されている画像や動画によって、若いダンサーたちが非現実的な基準に当てはめられることだ。
■悲劇を生む「目の保養」
ビシニョーワさんは過去13年間、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)での活動とロシア国内での舞台を半々に行ってきた。
「私たちが若い頃は、単にバレエ以外のことをする時間がなかった。今の子どもたちは、ソーシャルメディアに何時間も費やし、そしてそれをすぐに舞台でやろうとする」
「彼らはタイミングも分からないし、動きに対する意識もない。すぐにできるはずだと思っていて、今すぐにすべてを手に入れようとする」と彼女は指摘する。