【10月15日 CNS】上海市静安別荘の一角にある小さなワンタン店。開店以来30年余り、毎日午前6時からの開店に合わせ、午前5時15分には人が列を作る。

■長屋から店舗へ移っても変わらない味

 店主の名前は蔡さんといい、皆は「蔡師匠」と呼ぶ。

 蔡師匠のワンタン作りの腕は、先代の老師匠から学んだものだ。数十年前の店の仕事は、今では想像もつかぬほど辛かったという。毎朝午前4時半、石炭の粉を丸めた炭団(たどん)を買いに行く。帰ってくると炉に火を入れる。修行に耐えた蔡さんは、老師匠から認められ、ワンタン作りのこつを少しずつ学んだ。老師匠の教えに自分の工夫を重ね、技を磨いた。

 本物の味は人を引き付けるものだ。蔡師匠のワンタン店は少しずつ大きくなり、奥の自分の休憩スペースまで店の一部へと拡張。その後、区画整備のあおりで営業ができなくなる。

 2か月間の営業停止の間、もう苦労をして働く必要はない、やめる潮時だと思い悩んだ蔡師匠だったが、古い友人からの問い合わせの電話や、いつ営業を再開するのかと尋ねてくるなじみの客を見て心が動いた。

■私を信じてくれる人がたくさんいるから・・・と再開を決心

 隣近所の助けもあり、蔡師匠は、コーヒーショップやピカピカの菓子屋が並ぶ威海路(Weihai Lu)で小さな店舗を探し、ワンタン店を続ける決心をした。

「貯蓄をほとんどつぎ込んでしまったが、皆がワンタンを食べに来てくれるので、やりがいがある」と蔡師匠は語る。