罪の記憶なくした高齢の死刑囚への刑執行は合憲か 米最高裁で審理
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【10月8日 AFP】米国で1人の死刑囚をめぐり、最高裁の判断が求められている。バーノン・マディソン(Vernon Madison)死刑囚(68)は、刑務所の中で2回の脳卒中を発症し、弁護団によれば、自身が犯した罪も判決理由も覚えていない。同死刑囚への刑執行は、「残酷で異常な刑罰」の禁止を明記した合衆国憲法に準拠し、倫理的で合法的なのか──最高裁の判断についてのカギを握るのは、9人目の判事のいすに座る人物だ。
最高裁は2日、この問題がマディソン死刑囚以外にも適用される可能性を考慮し、弁護側の主張を聞く審問を開いた。米国の刑務所には高齢の死刑囚が多数収容されており、今回の判断が影響する可能性があるためだ。
マディソン死刑囚は1985年、アラバマ州の都市モービル(Mobile)で、家庭内のけんかを止めに入ろうとした警察官の頭を銃で2回撃って死亡させた。だが最終的な判決が下されるまでには、9年を要した。
同死刑囚は、2015年と2016年に計2回の重度の脳卒中を発症。現在はほぼ失明状態で、介助なしでは歩くこともできず、失禁もみられる。記憶力は著しく低下しており、アルファベットも暗唱できず、何年も前に他界した母親にしきりに会いたがっている。自身が犯した罪や死刑判決に至るまでの裁判の記憶もないという。
マディソン死刑囚の弁護人を務めるブライアン・スティーブンソン(Bryan Stevenson)氏は2日、合衆国憲法修正第8条にのっとれば、衰弱して精神が混乱状態にある場合に刑を執行するのは「どう考えても人道的ではない」と最高裁判事らに主張した。
スティーブン・ブライアー(Stephen Breyer)最高裁判事は、高齢の死刑囚の人数を考慮すると、今回のケースは、マディソン死刑囚以外にも当てはまる重要な問題だと述べている。
全米で65歳を超える死刑囚の数は、2011年には全体の4%近いおよそ100人に上っている。