平和賞、性暴力受けた「すべての女性に」 受賞2氏がコメント
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【10月6日 AFP】2018年のノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)の受賞が決まったイラク少数派ヤジディー(Yazidi)教徒の人権活動家、ナディア・ムラド(Nadia Murad)氏(25)は5日、賞は性暴力に苦しむすべての女性にとって重要な勝利だと述べた。
ムラド氏と共に受賞が決まったコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ(Denis Mukwege)医師(63)は、紛争で傷つけられてきた世界中の女性たちと「暴力に日々直面している」人々に賞をささげると語った。
今年のノーベル平和賞では、世界の紛争地における性暴力と闘ってきた2人の功績が評価された。
ムラド氏は米マサチューセッツ州のケンブリッジ(Cambridge)でノーベル賞公式ウェブサイトとの電話インタビューに英語で応じ、受賞決定は「私だけでなく、イラクや世界中にいるこのような女性すべてにとって多くのことを意味する」と言明。
「公の場に出て自分の身に起こったことについて話すのは、簡単ではなかった。なぜなら、とりわけ中東の女性にとって、外に出て性奴隷としての経験について話をするのは、簡単ではないからだ」と説明した。
さらにムラド氏はヤジディー教徒の民族言語であるクルド語で、この賞は「迫害を受けているこうした小さなコミュニティーの声が届いていることを示している」と語り、その声が「他にも多くの場所で紛争中に性暴力の被害に遭っている女性すべての声となるよう望んでいる」と述べた。
ムラド氏は、2014年にイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に拉致され、3か月間性奴隷として拘束されたものの、逃げ出すことに成功。同年のISによる襲撃で拉致、レイプ、虐待の被害を受けたヤジディー教徒の女性や少女は、ムラド氏を含め数千人に上った。国連は一連の行為をジェノサイド(大量虐殺)と断じている。
ムクウェゲ医師は、自身が開設したコンゴ民主共和国東部ブカブ(Bukavu)の病院の外で「このノーベル賞は、世界のすべての国にいるレイプや性暴力の被害女性たちの苦しみと、そうした女性たちに適切な補償が行われてこなかったことを認識するものだ」と述べた。
ムクウェゲ医師は、紛争の続く同国東部で性的虐待やレイプにより傷やトラウマ(心の傷)を負った女性たちの回復を支援しており、その活動は約20年前から知られている。
同医師は受賞の決定について「長く待ち望まれた補償が実現するための重要な一歩だ。多くの苦しみを受けてきたこうした女性たちに対して、私たち全員に補償する義務がある」とした。暴力の被害を受けた女性らに対し、今回の賞は「世界があなたの声を聞いている」ことを示していると語り掛け、「世界はあなたの苦しみに向き合ったときに、傍観したままではいないということだ」と述べた。(c)AFP