まるでスパイ小説… ロシアOPCWハッキング計画の顛末
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【10月5日 AFP】オランダ情報機関は4日、ロシアが4月に化学兵器禁止機関(OPCW、本部=オランダ・ハーグ)へのサイバー攻撃を試みたことを明らかにした。オランダ当局は攻撃を阻止し、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の男性工作員4人を国外退去処分にしたと発表。冷戦(Cold War)期のスパイ小説さながらのこの事件について、これまでに分かっている情報をまとめた。
オランダ当局が公開した外交旅券(パスポート)によれば、4人の氏名はオレグ・ソトニコフ(Oleg Sotnikov)、アレクセイ・モリニェツ(Alexei Morenets)、アレクセイ・ミニン(Alexei Minin)、エブゲニー・セレブリャコフ(Yevgeny Serebryakov)。旅券のうち2通は番号が1つしか違わず、任務のために特別に発給された可能性がある。
4人は4月10日、ロシアの首都モスクワからオランダの首都アムステルダム近郊にあるスキポール(Schiphol)空港に到着し、外交旅券を使って入国。空港でロシア大使館の職員1人に出迎えられた。オランダ治安当局は、4人を「近接アクセスハッキング」(インターネットを介さず直接的に侵入するハッキング)を実行するロシアの情報工作員と特定し、監視を開始した。
11日、容疑者らは乗用車シトロエン(Citroen)C3をレンタル。11、12両日には、容疑者らがOPCW周辺を偵察し、隣接するマリオット・ホテル(Marriott Hotel)の客室の窓から同機関の写真を撮る様子が確認された。
13日、容疑者らはシトロエンの荷室に電子機器を置き、車両後部をOPCWの建物に向けるようにマリオット・ホテルの駐車スペースに停車。同日午後4時30分に機器のスイッチを入れたところを、オランダ軍情報部門の部隊が急襲した。
オランダ当局は車の荷室からコートの下に隠したアンテナや、コンピューター、バッテリーを発見した。当局によれば、容疑者らは一連の機器を使い、OPCWのWi-Fi(無線LAN)電波とログイン情報の傍受を試みていた。
当局はさらに、容疑者らが所持していた携帯電話などの機器を発見。うち一人はさらに現金4万ユーロ(約520万円)と2万ドル(約230万円)を所持しており、容疑者らは旅行費用として使う予定だったと供述した。
また、セレブリャコフ容疑者のノートパソコンから、同容疑者が4月9日にマリオット・ホテルとOPCWについて検索していたことが判明。さらに、押収された携帯電話の一つ、ソニー(Sony)のXperia(エクスペリア)が9日にモスクワのGRU本部付近で起動されていた。
モリニェツ容疑者は、10日にモスクワのGRU官舎がある通りからシェレメチェボ空港(Sheremetyevo International Airport)までタクシーで移動した際の領収書を持っていた。
容疑者の一人が所持していたノートパソコンには、ブラジル、スイス、マレーシアでの記録があった。うちマレーシアでは、ウクライナで起きたマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH17便撃墜事件の調査に関係する活動が行われていた。(c)AFP