【9月20日 AFP】オーストリアのザルツブルク(Salzburg)で19日に始まった欧州連合(EU)の非公式首脳会議は、英国のEU離脱(ブレグジット、Brexit)をめぐる交渉の行き詰まりを打破するにあたって誰が主導権を握るかで、テリーザ・メイ(Theresa May)英首相とEU各国の首脳が互いに譲歩を要求し合う展開となった。英国は来年3月にEUを離脱する予定で、両者が離脱条件で合意しないまま離脱の日を迎える懸念が高まっている。

 欧州理事会(European Council)のドナルド・トゥスク(Donald Tusk)常任議長(EU大統領)は首脳会議冒頭、重要問題に関する英国の立場について「修正されなければならない」と厳しく警告。離脱交渉は「決定的な局面」に入りつつあるが、先行きは不透明だと述べた。

 トゥスク氏は、安全保障面での協力については英国の姿勢が「前向きな進化」を遂げていると歓迎したものの、英領北アイルランドとアイルランドの国境についてと、離脱後の通商関係については「英国の提案は修正した上でさらに協議する必要がある」と指摘した。

 また、EU議長国オーストリアのセバスティアン・クルツ(Sebastian Kurz)首相も、EUには「譲歩の用意があるが、英国の譲歩も期待している」と述べ、メイ首相に「前進」するよう求めた。

 しかし、「合意なき離脱」に備えて今後の通商関係に関する文書を8月に公開したメイ首相は、EU側が譲歩するべきだと主張。「首尾よく合意にこぎ着けようとするなら、英国が今の立場へと発展を遂げたのと同様に、EUも立場を進化させなくてはならない」と述べた。

 メイ氏は19日の夕食会でも「もちろん、われわれはあらゆる細部まで合意し尽くすことはないだろう」が、「合意を成立させる責任は今や全員にある」と述べた上で、英国の心変わりを期待する声にくぎを刺した。(c)AFP/Alice RITCHIE