【9月19日 AFP】ラグビー南半球4か国対抗戦、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(The Rugby Championship 2018)で強豪ニュージランドがまさかの敗戦を喫したことで、各国の代表チームには来年のラグビーW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)でオールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表)から優勝トロフィーのウェブ・エリス・カップ(Webb Ellis Cup)を奪取するという、淡い期待が芽生え始めている。

 ニュージーランド・ウェリントンで行われた15日の第4節で、スプリングボクス(Springboks、南アフリカ代表の愛称)は36-34でニュージーランドを下し、同大会におけるオールブラックスの連勝記録を15で止めた。

 W杯では母国開催となった2011年大会に続き、2015年のイングランド大会でもタイトルを獲得したニュージーランドは、この3年間ラグビー界で圧倒的な強さを誇ってきた。2017年に行われたブリティッシュ&アイリッシュライオンズ(British and Irish Lions、英国とアイルランドの選抜チーム)とのシリーズでは、第2戦に21-24の敗戦を喫して対戦成績1勝1敗1分けとしたが、この試合を除きホームで敗れたのは2009年以来のことになった。

 2019年W杯を1年後に控える中、今回の結果によって王者の鉄壁のよろいにも少しは隙があるという証拠を示してしまったオールブラックスのスティーブ・ハンセン(Steve Hansen)ヘッドコーチ(HC)は、「われわれが負けたのは南アフリカに36得点も許してしまったからで、それはチームとしてコントロールできるはず。ラグビーはチームスポーツだ」と述べた。

 ニュージーランドは先日の南アフリカ戦で、スター選手のボーデン・バレット(Beauden Barrett)が6本中4本のキックを失敗するなど精彩を欠き、守備でも普段ならあり得ないような初歩的なミスが続いてしまった。

 しかし、スプリングボクスは前述のライオンズのごとく、守備陣が肉弾戦で一歩も引かなかった上に、ブレークダウンでも競り合えることを証明し、攻撃一辺倒のオールブラックスに対抗する実力を示したといえる。

 試合終了間際にバレットがドロップゴールを狙いにいかず、これが勝負を決してしまったことを後悔しているハンセンHCは、勝利に慣れ過ぎてしまったニュージーランドにとっては今回の敗戦がちょうど良い目覚ましになると付け加え、「スポーツの大会では、あまりにも試合が順調すぎると精神的に少しスイッチが切れてしまうことがある。それが実力のある対戦相手とプレーしている場合だと、反撃されて手痛い目に遭う」と述べた。

「われわれにとっては、大きな教訓になるだろう。このチームは、これまであまり逆境に遭遇したことがない。大きく深呼吸して物事を正し、客観的になる必要がある。これは極めて重要な教材になるから、私もこの数週間でより良い指導者になれるだろう。私の仕事は良き教育者になることで、選手たちの仕事は良き生徒になること。チームとしてそのことを話し合っていて、今後は私次第だ」

■「重圧に対する免疫がない」

 元ライオンズの選手で現在は指導者を務めているイアン・マクジーチャン(Ian McGeechan)氏は、オールブラックスには「重圧に対する免疫がないこと」をスプリングボクスが証明したとして、日曜紙サンデー・テレグラフ(Sunday Telegraph)に対して、「ニュージーランドは、トライによる圧倒的な得点力に頼っているため、競り勝つという経験があまりないのだろう」と述べた。

「ニュージーランド戦では、ブレークダウンで競り合う必要がある。言うはやすく行うは難しというがね。彼らは次に向けて態勢を立て直し、リセットするのに長けたチームだ。一度、前のめりになったらその状態を維持できる」

「オールブラックスは相手が追いつけないようなペースでプレーする。それはミスも伴うが、彼らにとっては重要ではない。彼らはペースを上げ続ければ、99パーセントの確率で対戦相手が1時間以上も耐えられないと知っている。南アフリカにはそれができた。なぜなら、試合を通してコンタクトエリアで競り合い、2人のハーフバックが相手をしつこく追いかけたからだ。ニュージーランドも負けることはある」 (c)AFP/Luke PHILLIPS