永久凍土の融解、気候変動への対策計画を台無しに 研究
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【9月18日 AFP】地球温暖化の進行抑制を掲げる国際的な目標が、予想よりも早く破たんする恐れがあると警告する研究論文が17日、発表された。永久凍土の融解で放出されるガスが、気候変動の危機的状況回避に向けた努力を台無しにすると考えられるためだ。
2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で概略が示されている現行の救済計画の下では、世界気温の上昇幅を2度未満に「十分低く」抑え、可能であれば1.5度未満を目指すことで各国が合意した。
この行動計画は、排出の減速や大気中からの除去など、温室効果ガスへの人為的な対策を講じることで地球温暖化を十分抑えられることが前提となっている。
オーストリア・国際応用システム分析研究所(IIASA)などの研究チームが17日に発表した論文によると、永久凍土の融解による温室効果ガス放出量の予測値を初めて組み込んだ地球気候変動モデルを実行したところ、そこからは懸念を高める結果が得られたという。研究論文は、英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」で発表された。
論文の筆頭執筆者で、IIASA研究員のトーマス・ガッサー(Thomas Gasser)氏は「地球温暖化によって引き起こされる永久凍土の炭素放出は、地球温暖化が特定の水準未満にとどまっている間に、人為的に排出可能な二酸化炭素(CO2)量(CO2予算)を確実に減少させる」と説明。化石燃料への依存状態が続くと、パリ協定の気温目標を短期または中期間で「超過する」可能性が高いとも予測した。
産業革命前の水準からみた気温の上昇幅は1度となっている。それでも世界の永久凍土層はゆっくりとではあるがすでに融解している。
地球温暖化の進行に伴い、この融解のペースが加速するのは避けられない。
ガッサー氏は、「超過」シナリオに従うと、地球は永久凍土の炭素放出に対してますます脆弱(ぜいじゃく)な状態になり、負のフィードバックループでさらに温暖化が進行すると考えられると警告する。
事実、研究で実施されたモデルの一部では、永久凍土の炭素放出の結果として、すでに1.5度の目標からは外れているのだ。
AFPの取材にガッサー氏は、「超過は危険を伴う戦略であり、超過後にそれより低い水準に戻すことは極めて困難になる」と述べ、「より安全な水準には二度と戻れない可能性があることを覚悟する必要がある」と続けた。