韓国の巨大キリスト教会、世襲めぐり論争 ろうそくともす抗議集会も
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【9月17日 AFP】キリスト教プロテスタント長老派の中で世界有数の規模と資産を誇る韓国の教会が、牧師父子の世襲支配をめぐる騒動の渦中にある。
韓国では宗教が今も強力な社会的勢力として存在し、大規模な宗教団体は膨大な資産と巨大な影響力を誇る。2014年の統計によると、同国人口のうち、仏教の21%を上回る約22%がプロテスタントの信者で、カトリックが7%となっている。
首都ソウルにある10か所超の巨大教会もそれぞれ、何万人もの信徒と彼らの献金による巨額の年収、広大で豪華な施設を擁している。その指導者たちは高い社会的地位や役得を享受し、教会関連財団での役職に就いたり、政治力を振るったりしている。
そうした中でもとりわけ巨大なのが、40年前に金森煥(キム・サムファン、Kim Sam-whan)牧師(73)が創設した長老派の明声(Myungsung)教会だ。
明声教会は発足当時、首都の東端にある一教会にすぎなかったが、今では2本の尖塔がそびえ立つ巨大な本部施設を持ち、10万人の信徒がいる。さらには宗教に関するテレビチャンネルや、学校2校、幼稚園1校、6階建ての会議・結婚式場、全国各地の福祉施設や教育施設、韓国で2か所、エチオピアでも1か所の医療施設を運営している。
しかし、金牧師が息子の金河那(キム・ハナ、Kim Ha-na)氏(45)を主任牧師に昇格させ、この「資産帝国」を継がせようとしたことから批判と論争が起きた。
■失われたソウル(魂)
韓国の巨大教会では、1997年に忠賢長老教会(Chunghyun Presbyterian Church)が初めて創始者からその息子へと引き継がれ、後にいくつかの教会がそれに倣った。しかし、そうした世襲は韓国経済を独占する同族経営の財閥と同じだとして、世論の批判と反発を招いてきた。そして2013年には、ついに統括組織「大韓イエス教長老会総会(PCK) 」が教会憲章を改定し、世襲を禁じた。
明声教会の金牧師父子を批判する人々はこの一件を教会の審議にかけたが、父親の金牧師は2年前に公式に引退しており、直接引き継いだのではないため正当だとして異議は却下された。
しかし、この決定は論争をあおりたてることとなり、牧師900人が抗議集会を開き、神学校の学生たちは授業をボイコットし、ニュースのポータルサイトには批判コメントがあふれる結果となった。
あるコメントは「彼(父親の金牧師)は教会を自分の財産だと思っている。自分の息子にしか引き渡すことができないのだ」と断じ、抗議集会に参加した別の巨大教会の関係者は、教会の「私物化だ」と批判した。
そうした中、PCKの総会は教会の裁定を覆し、審議を行った15人全員の任を解き、もう一度ゼロから審議をやり直すことを決定した。
ソウルにある安東教会(Andong Church)の柳経栽(ユ・キョンジェ、Yu Kyung-jae)牧師は、PCKが新たな審理で明声教会の世襲を無効とすると期待しているものの、明声教会側が撤回する「可能性はほぼない」とし、事態は行き詰まるだろうと指摘。「物欲的な拡大ばかりに熱中しているこの国で、巨大教会をめぐる不和や摩擦はこれからも目にすることだろう。神と富の両方に仕えることはできないのだ」と述べた。
しかし、これにひるまない金森煥牧師は、今月行われた礼拝で信者を前に「これは事業を継ぐとか、そういったことではありません。犠牲と痛みという重荷を継承するのです」と語り、聖書の例えを使って反対派を非難。「彼らはあらゆる手段を使って、石を投げて、私たちを殺そうとしている」「悪魔たちが私たちを攻撃している」と話した。(c)AFP/Park Chan-kyong