【9月14日 AFP】生息圏の北極海を離れて南方をさまよっていた若いイッカクが、カナダのセントローレンス川(Saint Lawrence River)で、ベルーガの群れに新たな仲間として迎え入れてもらったようだ。海洋生物保護団体が13日、明らかにした。

 牙と灰色の斑点が特徴的なイッカクは今夏、約10頭の白いベルーガの群れに交ざって泳いでいるところを海洋生物学者らによって撮影された。

 カナダ東部ケベック(Quebec)州タドゥサック(Tadoussac)の非営利団体で、海洋哺乳類に関する研究と教育を行う「GREMM」のロバート・ミショー(Robert Michaud)所長によると、海面近くで互いに回転し体を擦り寄せたり、生殖器を露出したりしている様子から、イッカクがベルーガの群れに全面的に受け入れられていることが見て取れるという。

 イッカクの生息圏はカナダ、ノルウェー、グリーンランド、ロシア周辺の北極海で、これほど南下することはあまりない。

 イッカクがベルーガの群れと一緒にいるのが最初に目撃されたのは2016年で、翌年にも確認されていた。そして今年7月、GREMMがドローンを飛ばし、ベルーガの群れと共に泳ぐイッカクの姿を初めて映像に捉えた。

 セントローレンス川のベルーガは、同種としては最南端に生息する個体群で、絶滅の恐れも危惧(きぐ)されている。

 ベルーガとイッカクの生息海域は北極海で部分的に重なり合い、お互いに近縁関係にあるが、双方の交流が見られるのは稀だ。

 ミショー氏は、放浪癖のある若いクジラが「困難な状況」にしばしば追い込まれることを指摘しながら、このイッカクがベルーガの群れに仲間入りできたことは「実に幸運だった」と話す。また若いイッカクが生きていくためには、他の個体との接触が必要であることも説明した。

 そして、「イッカクはベルーガになる修行中だ」と笑いながら述べ、「これからどうなるだろうか。イッカクとベルーガは60歳まで生きる。先は長い。楽しみに見ていこう」と続けた。(c)AFP