ナチス略奪のルノワール絵画、ユダヤ人収集家の孫娘に返還 米NY
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【9月13日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)が第2次世界大戦(World War II)中にフランス・パリの銀行の貸金庫から略奪した印象派の巨匠ピエール・オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)の絵画が12日、70年以上の数奇な旅路を経て、正当な所有者に返還された。
ルノワールの死去直前の1919年に描かれた絵画「Deux Femmes Dans Un Jardin」(庭の2人の女性、の意)は、第2次大戦前のパリで著名な美術品収集家だったユダヤ人男性、アルフレート・ワインベルガー(Alfred Weinberger)氏が所有していた。
しかし、ナチスは1941年12月、ワインベルガー氏が戦争を避けてパリを離れていた間に、同氏のコレクションを保管先の銀行の金庫室から略奪。同氏は終戦後、仏独当局に掛け合うなどして何十年もコレクションを取り戻そうと尽力していた。
米ニューヨークのユダヤ遺産博物館(Museum of Jewish Heritage)で開催された式典で、「Deux Femmes Dans Un Jardin」はワインベルガー氏の孫娘で唯一存命の相続人、シルビー・シュリッツェル(Sylvie Sulitzer)さんに返還された。
シュリッツェルさんには祖父の思い出こそあるものの、行方不明になった絵画のことは、ナチス略奪美術品の回収を専門に取り扱っているドイツの法律事務所から数年前に連絡を受けるまで全く知らなかったという。「皆いなくなってしまったけれど、愛する家族に正義の存在を示すことができて、とても感謝している」と語っている。
米当局によると、今回返還されたルノワール作品は、1975年に南アフリカのヨハネスブルクで開かれた競売で存在が確認されたが、その後も英ロンドンやスイスのチューリヒで競売にかけられるなど転々と持ち主が代わった。ニューヨークの競売大手クリスティーズ(Christie's)が個人収集家の出品物の中にこの作品を見つけて連邦捜査局(FBI)に通報し、所有者が手放すことに同意したことで、返還が実現した。
シュリッツェルさんがAFPに語ったところによると、ワインベルガー氏のコレクションはまだルノワール作品4点、フランスの巨匠ウジェーヌ・ドラクロワ(Eugene Delacroix)の絵画1点が取り戻せていないという。
1940年にフランスを占領したナチスがユダヤ人から略奪した美術作品は、10万点に上るとみられている。(c)AFP